朝ドラ『ブギウギ』第49話はなぜ異例の“歌唱構成”に? 「大空の弟」の裏側をCPに聞く
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。 【写真】最後にスズ子(趣里)の前に現れた笑顔の六郎(黒崎煌代) 第10週では、スズ子らのもとに弟・六郎が戦死したとの知らせが届く。「怖かったやろな、寂しかったやろな、かわいそうやったな」。愛する弟を思い、そう嘆き悲しむスズ子の救いとなったのが、羽鳥善一(草彅剛)が彼女のために描き下ろした楽曲「大空の弟」だった。 2019年に楽譜が見つかった「大空の弟」は、羽鳥のモデルである服部良一が作詞・作曲。制作統括の福岡利武は「基本的に楽譜はそのままですが、笠置さんの弟は八郎さんなので、ドラマに合わせて歌詞を少し変えています」とし、「戦争の歌を作ることを苦手としていた服部さんも、姉弟の思いを汲んで『これは歌にしなければいけない』と、この曲を作られたのではないでしょうか。当時、戦争で若いお子さんや兄弟を亡くされた方もたくさんいらっしゃったので、そういう方に寄り添う、本当にいい歌だなと思います」と楽曲の印象を述べる。 編曲を手掛けたのは『ブギウギ』の音楽担当であり、服部良一の孫でもある服部隆之。福岡は「隆之さんは祖父の思いをグッと歌に込めつつ、少しだけ自分の思いも乗せて、というかたちでアレンジしてくださいました。実際の音源がない楽曲なので、ドラマの中でどういうリズムで、どう歌うのか。テンポも含めてたくさん議論しました」と振り返る。 スズ子が「宝物」と称し、茨田りつ子(菊地凛子)との合同音楽会で初披露したこの曲は、これまで彼女が歌ってきた楽曲とは毛色が違う軍歌。今までのスイングとは歌唱法も魅せ方も異なるが、趣里は繊細かつ力強い歌声で、六郎への愛を見事に表現してみせた。 実はこのシーン、撮影時に趣里がステージ上で披露した歌声を録音し、そのまま劇中で使用しているのだという。 「やはりステージ上で弟への気持ちをしっかりと歌にしたい、ということもあって、その場で歌っていただいたものを録音して使いました。そういった意味でも、非常にエモーショナルな歌になっていると思います」 そこから舞台は、様々な感情を吹っ切るように「ラッパと娘」へと続いていく。そのコントラストがより一層視聴者の胸を打ち、福岡も「気持ちの振り幅が大きいので、趣里さんも力がうまく入って、とてもいいパフォーマンスを披露してくれました」と感服する。 一方で、第49話はりつ子の「雨のブルース」に始まり、スズ子の「大空の弟」「ラッパと娘」と、1話15分のほとんどをステージが占めるという異例の構成に。福岡は「普通はやらないと思います」と笑い、「“歌への気持ち”というバックステージもしっかりと描いているので、『また違った感情でこの歌を楽しんでもらえるのではないか』との思いもあり、本ステージを長く描きました」と狙いを語る。さらには「それも含めて『ブギウギ』っぽいなとすごく思いました。『歌を大事にしたい』という思いがあるので、僕はこういう回もいいなと思っています」と力を込めた。 「歌うことは生きること」。そんなりつ子の言葉を体現するかのようなステージに心震えた2人の合同音楽会。六郎への思いを胸に、再び立ち上がったスズ子の今後を見守りたい。
nakamura omame