視聴者本気でブチ切れ…名演技がハマり過ぎて大炎上の”悪役”俳優 (1)国民をドン引きさせた伝説の作品は?
ドラマや映画を見ていると「悪役」がハマりすぎて、嫌な気持ちになることがある。しかしながら、それは見方を変えれば、演技に説得力があったということに他ならない。今回は悪役、あるいはクセのある役を演じたことで視聴者からブーイングをくらうも、それを糧に成長を遂げた役者をセレクト。演技の魅力に迫る。第1回。(文・shuya)
佐野史郎『ずっとあなたが好きだった』(1992)
まず、紹介したい俳優が佐野史郎だ。芸能界きっての演技派俳優の1人であり、柔らかく知的な雰囲気で、作品に安定感をもたらす存在である。近年は、大病を患って活動を休止していたが、命の危機を乗り越えて俳優復帰を果たしている。 間もなく70歳にならんとする大ベテランの佐野を一躍有名にした作品が、ドラマ『ずっとあなたが好きだった』(1992、TBS系)である。このドラマで賀来千香子演じるヒロインの夫・冬彦を演じた佐野だったが、その役がなんと、マザコンかつオタクであり、セックスに対して強い嫌悪感を持つ、というなんともエキセントリックなキャラクターだった。 趣味は蝶の標本集め。妻に標本の配置を少し変えられただけで「勝手に動かさないでくれるかな」と冷酷な口調で言い放ち、かと思えば、気持ちが高ぶると早口で他者を罵倒する…。冬彦を演じる佐野の超強烈な芝居は、放送当時、お茶の間の話題をかっさらい、1992年の新語流行語大賞に「冬彦さん」が選ばれるなど、社会現象を巻き起こした。 一世一代のハマリ役を見事に演じ、個性派俳優として名を揚げた佐野。一方で、そのエキセントリックな演技は観る者の神経を逆なでし、「気持ち悪い」「怖い」「見てられない」といった過激な意見が飛び交う事態に。視聴者から「本気で嫌悪感をもたれる」ほど、佐野の演技は真に迫っていたのだ。 他方で、辛辣な声があった一方「なんだか放っておけない気持ちになる」といったポジティブな意見もあったようだ。 現在でも、良識的なキャラクターからクセのある人物まで、変幻自在に役に溶け込む佐野史郎。今後、ドラマ界は、佐野が演じた冬彦に匹敵する、視聴者をドン引きさせるほど強烈なキャラクターを生み出せるのであろうか。 (文・shuya)
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