陸上界トップが指導する「足トレ」 跳馬の助走改善を生んだ〝化学反応〟 革新 徳洲会体操クラブの挑戦(9)
徳洲会の足トレは月曜日と木曜日の週2回で、全員参加ではなく、必要性を感じる選手たちが取り組んでいる。試合期を除いて月1回程度、俊雄の直接指導があり、年に1回は30メートル走や立ち三段跳びなどの測定で成長をチェックする。これまでは俊雄がメインのコーチを務めていたが、今後は久美子も指導に加わることが増えそうだという。
■独特の走りを美しく
体操と陸上。異なる文化が交わると、どんな〝化学反応〟が生まれるのか。藤巻竣平(25)は足トレの中で、陸上の跳躍種目では助走のスタート位置を気象条件や選手の調子によって前後させることを知り、跳馬の助走の長さを自身の状態に合わせて微調整するようになった。
杉野正尭(たかあき)(26)は楽に助走スピードを出せるようになり、ロペス(伸身カサマツ跳び2回ひねり)の跳躍が安定してきた。「体操選手はつま先を伸ばしてしまうので、地面をかくような走り方だったけど、(足裏の)面で捉えて反発をもらいながら走れるようになった。助走が自動化されたことで、ロイター板を蹴った後の局面に意識を向けられる」。28年ロサンゼルス五輪に向けては、ロペスに半ひねり加えた最高難度のヨネクラに挑戦していく構想だ。
体操選手は肘を曲げない独特のフォームで走ることが多い。俊雄は「着手の準備動作なのかもしれない」と分析したうえで、「肩が上がることはプラスにならない。美しく洗練された走りを徳洲会の選手から広めていけたら」と青写真を描いている。=敬称略
(宝田将志)