「ネットに繋げると攻撃される…」山中伸弥が語る、ゲノム情報を取り巻くヤバすぎる日本の「危機」
「iPS細胞技術の最前線で何が起こっているのか」、「将棋をはじめとするゲームの棋士たちはなぜ人工知能に負けたのか」…もはや止めることのできない科学の激動は、すでに私たちの暮らしと世界を変貌させつつある。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋してお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第12回 『「たった数十人ですべての日本人を救う」ノーベル賞科学者・山中伸弥が明かす、iPS細胞の驚きの「秘密」』より続く
細胞バンクは公的機関が担うべき
羽生 アメリカでは、スーパードナーから作った細胞を保管する細胞バンクが乱立しているという話を聞いたことがあります。 山中 アメリカにはもともと、そういうバンクは非常に多いですね。保険制度の違いもあると思います。日本にはみんなが平等な治療を受けられる国民皆保険のシステムが整備されていますが、アメリカは保険のある人ない人、一人ひとり違います。保険にも種類がいろいろあって、どこまでの治療が保険でカバーされるのか人によって違います。その辺の文化の違いもあるとは思います。 日本はそうした細胞バンクをできるだけ一本化しようとしています。いちばん大きいのは、茨城県つくば市にある理化学研究所のバイオリソースセンターです。これは国のプロジェクトです。僕たちはCiRA(京都大学iPS細胞研究所)で作った細胞のほとんどをつくばに送っています。ただ、一ヵ所だけに保管すると災害などで一度に全部失われてしまう可能性がありますから、CiRAにも置いてリスク分散を図っています。 羽生 個人の細胞の保管は、公的機関と民間機関のどちらが担ったほうがいいのでしょうか。というのは、少し先のことを考えた場合、一人の個人のiPS細胞やES細胞があることが、その人の生命そのものを守るという事態があり得ますね。となると、iPS細胞を持っていることが基本的な人権のようなものになるかもしれません。個人的には、公的機関が担ったほうが理にかなっているのかなと思うのですが。