「監督はあまり伝えようとしなくていいんです。と言って下さいました」綾瀬はるかが最新主演作で思い出した“10代の頃の演技の感覚”
大沢 監督の現場は、ほとんど自分の素のままでいられる楽しさがあります。 森井 2年前の『こちらあみ子』のとき一菜は10歳で、ひたすら遊んでいる合間になんとかカメラを回しました。今回はすこし大人になりつつ、この取材での様子も含めて、一菜はずっと真っ直ぐです。 綾瀬 台本のハルの言葉が本当に真っ直ぐで、なんて優しいんだろうと心打たれて、私はオファーをお受けしました。
生と死を混ぜ合わせた演出
─亡霊のようなおじいさんが現れるなど、詩的でユーモラスなシーンが目白押しです。 森井 映画を通じて生と死を混ぜ合わせて遊びたい、というのは私の個人的な願望ですが、おふたりに何の説明もしなかったですよね? 大沢 うん、何も気にしないで、人として接してた。 綾瀬 たしかに、あれは誰だったんだろう?(笑) 旅をしていたらいつの間にか一緒にいた、という感じでした。のり子を演じるにしても、本当にただそこにいることを大事にしてくださる演出が本当に好きで、自分が10代の頃の演技の感覚を思い出しました。
大沢の「自由ノート」
─なるほど。先ほどから気になっているんですが、大沢さんの手元にある「自由ノート」というのは何でしょう? 大沢 取材を受けるときに、うまく答えられるように準備したカンペノートです。 綾瀬 すごい、たくさん書いてある!(覗き込む) 大沢 (隠しながら)わっ、危なかった! 監督にだけ見せようかな……。 綾瀬 何なに? 森井 (ノートに書かれた一節を見ながら)隠す必要なくない? じゃあ私から聞こうか、大沢さんは将来どうなりたいんですか。 大沢 (照れながら)……綾瀬さんみたいにアクションができる人になりたいです。 綾瀬 わあ、楽しみ!
アクション作品での共演も!?
─アクション作品での共演もあるかもしれないですね。 森井 (なぜ言わせたのかと恥ずかしがる大沢に羽交い絞めにされて)イテテテテテ! 綾瀬 アハハハ! 一菜ちゃんとは、SPごっこをして遊んでるんです。「敵がいるぞ!」って、一菜ちゃんがSPとして私を守ってくれるんですよ。 綾瀬はるか=ヘアメイク:中野明海 スタイリング:吉田恵 衣装協力:ジャンプスーツ=デ・プレ 大沢一菜=ヘアスタイリスト:TAKAI スタイリング:田中美穂子 もりい・ゆうすけ 1985年生まれ、兵庫県出身。日本映画学校映像学科(現:日本映画大学)卒業。2022年、芥川賞受賞作家・今村夏子の同名短篇小説を映画化した『こちらあみ子』で監督デビュー。第27回新藤兼人賞金賞、第14回TAMA映画賞最優秀新進監督賞、第32回日本映画プロフェッショナル大賞作品賞および新人監督賞などを受賞し話題を呼ぶ。 あやせ・はるか 1985年生まれ、広島県出身。2000年、デビュー。08年、『ハッピーフライト』など4本の映画に出演し、第32回山路ふみ子映画賞新人女優賞などを受賞。09年の『おっぱいバレー』でブルーリボン賞主演女優賞、15年に『海街diary』で毎日映画コンクール、ヨコハマ映画祭主演女優賞など受賞多数。24年7月に写真集『原色 綾瀬はるか 2013ー2024』(小社刊)が発売された。 おおさわ・かな 2011年生まれ、東京都出身。映画『こちらあみ子』(22年)で応募総数330人の中からオーディションで選ばれ、主人公のあみ子役でスクリーンデビュー。第36回高崎映画祭最優秀新人俳優賞を受賞。23年、ドラマ「姪のメイ」、宮藤官九郎が監督・脚本を担当した配信ドラマ「季節のない街」などに出演。24年はRM(BTS)のMVに出演して、注目を集める。 INTRODUCTION 鮮烈な監督デビュー作『こちらあみ子』(22年)で多くの映画ファンを魅了し、第27回新藤兼人賞金賞受賞など高い評価を受けた、森井勇佑による待望の第2作。詩人・中尾太一の詩集『ルート29、解放』(書肆子午線)にインスパイアされ、姫路と鳥取をつなぐ国道29号線を旅しながら脚本を執筆した。映画・ドラマ撮影の時間が空いていたところに綾瀬はるかが台本に惚れこみオファーを受諾、『こちらあみ子』で奇跡的な演技を見せた大沢一菜と共に、リリカルなロードムービーに息を吹き込んだ。 STORY 鳥取の町で清掃員として働き、他人と必要以上のコミュニケーションをとらないのり子(綾瀬はるか)。仕事で訪れた病院で、入院患者の理映子(市川実日子)から「姫路にいる私の娘をここに連れてきてほしい」と頼まれ、姫路へと向かう。のり子が見つけたハル(大沢一菜)は、林の中で秘密基地を作って遊ぶような風変わりな女の子だった。初対面ののり子の顔を見て、「トンボ」というあだ名をつけるハル。ふたりは国道29号線を進む旅路で、さまざまな人たちと出会っていく。 STAFF & CAST 監督・脚本:森井勇佑/出演:綾瀬はるか、大沢一菜、伊佐山ひろ子、高良健吾、河井青葉、渡辺美佐子、市川実日子/2024年/日本/120分/配給:東京テアトル、リトルモア/©︎2024「ルート29」製作委員会
宮田 文久/週刊文春CINEMA