ホンダ、ル・マン挑戦の可能性は現状ゼロも“優先順位”次第と示唆「永遠に参戦しないという訳ではない」インディ撤退説も否定
自動車メーカーがこぞってル・マン24時間レース参戦を目指す流れの中で、ホンダは現状として参戦計画はないと明言している。ただ、将来的な参戦の可能性はゼロではないことをホンダ・レーシング(HRC)で社長を務める渡辺康治は示唆した。 【動画】フェルスタッペン、”インディカーエンジン搭載”のホンダ『CR-Vハイブリッドレーサー』 をドライブ! ル・マン・ハイパーカー(LHM)規定や、WECとIMSA双方の最高峰クラスへ参戦が可能なLMDh規定の導入により、プロトタイプレースが再び花開く昨今、世界耐久選手権(WEC)、そしてその一戦としてカレンダーに組み込まれるル・マンには多数のメーカーが参戦している。 2024年シーズンのWECでは、トヨタやフェラーリ、プジョー、ポルシェ、キャデラックといった既存メーカーに加え、BMWとアルピーヌ、ランボルギーニなどが最高峰クラスへの参戦を開始。2025年からはアストンマーティンがそのグリッドに加わる予定となっている。 一方で、ホンダの北米ブランドであるアキュラは、世界耐久選手権(WEC)のハイパーカークラスやIMSAのGTPクラスへ参戦が可能なLMDh車両ARX-06を開発しながらも、ル・マン24時間へ参戦していない唯一のメーカーだ。 こうした現状から、IMSAにアキュラから参戦するドライバーやエントラント、そしてARX-06の開発を主導した北米のホンダ・パフォーマンス・デベロップメント(HPD)からはル・マン参戦へ向けた「準備が整っている」との声も挙がっていた。 そして、HRDがHRCと統合されて“HRC US”と改称されたことで、早ければ2025年にもアキュラもしくはホンダブランドとしてル・マンに挑戦する道が開けるかもしれないとも考えられた。 しかし渡辺社長は、東京オートサロン2024でmotorsport.comのインタビューに応じ、ル・マンへの挑戦計画は「今のところはありません」と明言した。 その理由として、渡辺社長はHRC USのタスク増加を挙げた。昨年12月にはHRC USが、アストンマーティンに供給予定の次世代F1パワーユニット(PU)開発に携わることが明かされ、スタッフがレースサポートとしてサーキットに帯同することになったのだ。 ただ渡辺社長は、従来のインディカー・シリーズ、IMSA、そしてF1プロジェクトが軌道に乗れば、将来的なル・マン参戦を検討するかもしれないとも示唆した。 「永遠にないと言っている訳ではなく、優先順位の話です」と渡辺社長は続けた。 「まずは限られたマンパワーの中で、しっかりインディカーをやっていきます。そしてアメリカではIMSAのニーズが高く、そこで勝つことが優先です」 「そこにF1事業がプラスされることになります。USのメンバーが少しF1プロジェクトに入っていくことになるので、(ル・マン挑戦を検討するのは)そこが落ち着いてきてからになります」 なお、ホンダがインディカーでのエンジン供給を終了することを検討しているのではないかとの憶測について、現時点でホンダは撤退を検討していないと渡辺社長は語った。 この噂は、昨年12月にアメリカン・ホンダのモータースポーツマネージャーであるチャック・シフスキーがRACERとのインタビューの中で、インディカー参戦の投資利益率(ROI)が低いことを指摘し、コスト削減を実現できなければシリーズ撤退も検討すると語ったのがキッカケだった。 「我々はエンジンレギュレーションを全面的に変更し、年間数千ドルの技術コストを削減したいと考えている」とシフスキーは語った。 「そうしなければ、あまりにお金がかかりすぎるし、我々は他のことをするだろう。NASCARかもしれないし、F1へのさらなる投資かもしれない。あるいはモータースポーツではない何かかもしれない」 しかし、ホンダのインディカー撤退説についてmotorsport.comが渡辺社長に尋ねると、彼は「それはありません」と答え、次のように続けた。 「最終的にはアメリカでのニーズを聞いてやっていくことになります。だた、現時点で撤退しようということはありません」
滑川 寛