大量絶滅事件後に続いて訪れた「衝突の冬」…哺乳類といえども、生き抜けたのは「4つのグループ」だけだった
「衝突の冬」の到来
えぐられた地球表層は、細かな粒子となって、全地球規模の大気にばらまかれた。その結果、地表に届く日光が遮られ、寒冷化が始まり、植物が枯れ、植物を食べていた動物も、植物食動物を食べていた肉食動物も姿を消していく。 いわゆる「衝突の冬」の到来だ。 ノースウェスタン大学のスコテーゼたちが2021年に発表した論文では、このとき、地球の平均気温は6℃下がったという。現代日本の東京でいえば、7月の最高気温の平年値と、5月の最高気温の平年値の差にほぼ等しい。 再び大量絶滅事件の勃発となった。ハワイ大学のスタンレイが2016年にまとめた論文によると、このときの海棲動物の種の絶滅率は、68パーセント。陸棲動物の絶滅率は算出し難いところだけれども、鳥類をのぞく恐竜類、翼竜類などさまざまな分類群が姿を消した。
進化の歩みを続けようとする哺乳類
中生代を通じて、哺乳類は多様化を重ねてきた。 土を掘る種も、水中を泳ぐ種も、空を飛ぶ(滑空する)種も、樹木に登る種も、地中で暮らす種も、恐竜を襲う種もいた。 中生代約1億8600万年間、「恐竜時代」と呼ばれる世界にあっても、哺乳類は“進化の歩み”を止めることはなかった。とくに多丘歯類は、白亜紀後期に空前の繁栄を得ていた。
「衝突の冬」を生き抜いた4つのグループ
しかし、衝突の冬は、そんな哺乳類であっても、特別扱いをしなかった。 2005年にデンバー自然科学博物館(アメリカ)のグレゴリー・P・ウィルソンが、モンタナ州の白亜紀末の地層から産出した化石情報をまとめたところ、22~27種の哺乳類が、白亜紀末の大量絶滅事件で突然に姿を消したという。 そして、ウィルソンは2013年にも白亜紀末の大量絶滅事件と哺乳類に関する論文を発表し、植物食性、肉食性を問わずに大型種が姿を消したこと、このダメージから回復するためには少なくとも40万年の時間が必要だった可能性を指摘している。 中生代で栄えた各グループの中で、白亜紀末の大量絶滅事件を(なんとか)乗り越えることができたのは、四つのグループである。 単孔類、多丘歯類、真獣類、後獣類だ。 この4グループが滅びなかった理由(生き残った理由)は定かではないが、2023年にフィールド自然史博物館(アメリカ)のスペンサー・M・ヘラートたちがまとめたところによれば、“食の多様性”が関係している可能性があるという。 こうして、“人類に連なる物語”は、再び大転換点を迎えたのだった。 私たちホモ・サピエンスが登場するまで、まだ、およそ6550万年の歳月が必要である。