「メタル/カーボン/オルガニック」素材によって異なるクラッチの特徴とは?「小倉レーシングクラッチ」を例に解説します
■オルガニックの特徴
最後のオルガニックは純正クラッチにも採用されており、半クラッチの領域も広く、扱いやすい特性を持つが、メタルやカーボンに比べると耐熱温度が低く、急な操作に対して弱いという特性である。 つまり、チューニング志向が強い人はメタル、お金をかけても扱いやすく、伝達能力も高いものが欲しい人はカーボン、チューニングはほどほどで、操作性を悪化させたくない人にはオルガニックと、オーナーの使用用途などによって選択肢が明確に分かれているといっていい。 ORCのクラッチラインアップも基本その流れに沿ったものだが、ライトクラッチはオルガニックの特性はそのままに、慣性モーメントを減らすためディスクの軽量化も進め、ダイレクトなシフトフィールもプラス。メタルクラッチも特殊な3ピース構造のプレッシャープレート(スマートエンゲージ)を採用することで半クラッチ領域を増やし、ジャダーを低減するなどメタルのウイークポイントを解消(その他、クラッチ伝達時の衝撃を40%低減)した派生商品である「SEクラッチ」を用意するなど、独自性を持たせている。
クラッチを切った際に発生する「音」を求めるユーザーも多数
現在の売れ筋もこの2アイテムで、「ライトクラッチで容量が足りなくなったらSEクラッチを」という流れが王道だが、最近はドリフトを中心とした競技車両もSEクラッチをチョイスするユーザーが増えているそう。これは近年トランスミッションが手に入りにくくなっているのが理由だそうで、ダイレクトな繋がりよりもトランスミッションを壊さないことを優先した選択だ。 また、パフォーマンスアップへの対応ではなく、ラグドライブ式クラッチ特有のシャラシャラ音(バックラッシ音)を求めて、ライトクラッチではなく、メタルクラッチを選ぶユーザーの比率が高まっている。とくにトヨタ「86」&スバル「BRZ」などライトウエイトスポーツを愛用する若いユーザーはその傾向が強く、「音の出るクラッチはどれですか?」という問い合わせも多いとのことだ。 第2世代「スカラインGT-R」やトヨタ「スープラ」などのハイパフォーマンスカーとなると、ライトクラッチでは容量不足で、SEクラッチがスタンダード。これは近年のスポーツカーの相場が高騰したことで、ハードなチューニングを施す人はごく一部となり、長く乗り続けたい層が増えていることも影響しているだろう。 ユーザーニーズの変化に製造技術と創意工夫で向き合い、これまでのクラッチにプラスαの性能を加えたり、扱いにくいイメージを過去のものとしたORCの強化クラッチ。クラッチのリフレッシュやアップグレードを検討中のオーナーはその選択肢に加えてはいかがだろうか。
山崎真一