あなたの知らない札幌《北海道開拓の村》後編 「地域密着」へあの手この手
【北海道・札幌】人口200万人の声も聞こえる北の大都市・札幌。その札幌には、多くの観光地や名物施設があります。とはいえ、札幌市民ですらそれらのすべてを知っているわけではありません。そこで不定期連載として「あなたの知らない札幌」と題した企画をスタートします。第2回後編は、明治・大正期の貴重な建物が並ぶ野外博物館「北海道開拓の村」(札幌市厚別区)のこれからについて同村を運営する北海道歴史文化財団の松井則彰さんに聞きました。(構成/橋場了吾)
地元の人にこそ歴史を知ってもらいたい
現在、北海道の観光地はインバウンド景気に沸いているといわれます。確かに、北海道開拓の村にも多くの外国人の方に来ていただいています。とはいえ、一番この村に来ていただきたいのは、北海道に住む道民の方々であり、日本に住む日本人の方々です。 北海道開拓の村は、北海道の150年の歴史が凝縮されている場所ですから、やはり地元の方々に住んでいる場所の歴史を知ってもらいたいという思いが強いです。そのため、日本の旅行者がどのように行動しているかを分析し、この場所に立ち寄ってもらうためにさまざまな施策を行っています。その活動が実を結んだのか、ありがたいことに右肩上がりで来村者が増えてきています。 「地域密着」を目指し、村内の畑で当時の農作物……札幌八行(とうもろこし)、まさかりかぼちゃ、じゃがいも、そばなどを育てていて、この栽培から収穫を体験できるという施策も行っているのですが、先日募集したところ、すぐに予約が埋まりました。また「旧広瀬写真館」ではスタジオでの撮影を行っているのですが、毎年家族写真を撮りに来る家族もいらっしゃいます。このような「地域密着」を感じると、すごく嬉しいですよね。
改修に数千万円……「建物の保存」も課題
建物自体がアンティークなので、改修しようとすると1棟数千万円の費用がかかることもあります。現時点での北海道開拓の村の最大の課題は、この「建物の保存」です。そこで、少しずつ改修しながらマイナーチェンジを図ってきました。 プラスして、より当時の生活に近づけていく工夫をしていきたいと思っています。これまでも、ボランティアメンバーによる実演や畑仕事、子供向けの体験学習などを行ってきたのですが、もっと本格的に当時の「人の動き」を再現する演出を増やしていくつもりです。 その一環として、お客さんに特定の建物のオーナーのような形でイベントや施策についてアイディアを出してもらう「住民登録制度」をスタートしました。この制度により、より臨場感があふれる場所となり、より地域に密着した場所になると思います。 このような当時の生活を知ってもらう一方で、まずは村に来てもらうという施策も行っています。それが、「旧浦河公会会堂」で行っている「村の結婚式」であり、毎年6月に行っている音楽イベントです。そして今後は、幼児も参加できるイベントにも注力したいと思っています。 北海道開拓の村は、明治・大正期の歴史ある街並みを再現した野外博物館ですので、当時の生活を知ってもらうのはもちろんですが、将来的な村の施設の活用方法についても考えていきたいと思います。