<春再び―市和歌山の挑戦>/上 「弱くなったと言わせない」 新人戦敗戦で力量、課題が明確に /和歌山
「小園・松川が抜けて弱なった言わさんぞ」――。市和歌山の新チームは、そんな反骨の合言葉で始動した。 全国から注目を集めた「黄金バッテリー」。昨秋のプロ野球ドラフト会議で共に1位指名された小園健太投手(DeNA)、松川虎生捕手(ロッテ)をはじめ、好敵手・智弁和歌山との死闘をくぐり抜けて昨春のセンバツ出場を果たしたチームの主力は、いずれも一つ上の代の先輩たちばかりだった。 「前のチームで主力を担っていたと言えるのは米田(天翼投手=2年)のみ。ほとんどがレギュラー経験はない。しんどいかなと……」。半田真一監督(41)が新チーム発足当初の思いを振り返る。松村祥吾主将(2年)も「先輩たちと比べて走攻守、全てでレベルが劣っている」と感じていた。半田監督は「気持ちを前面に出そう」とチームに求めた。周囲に足もとを見られないような気迫が、まずは何より大切だった。 新チーム発足後、間もない新人戦。3回戦では日高中津に終盤まで0―3とリードされる苦しい試合になったが八回、九回に立て続けに得点し、サヨナラ勝ちする粘りを見せた。しかし、県2次予選進出を決めた後の準決勝・和歌山商戦では、中盤に2点を先取するも逆転負けを喫した。 この敗戦で、松村主将は「投手任せになってしまった」と得点力不足を反省した。打撃もいい米田投手はこの試合、右翼手として先発出場していた。その後マウンドにも上がったが、「準備不足だった。新チームになって投手と野手をどちらもやることはあったが、メンタルの維持が難しく、投げることだけに集中とはいかなかった」と当時の心境を語る。 反省しきりの選手たちだったが、試行錯誤の中、半田監督は「負けたのはプラス」とみていた。「優勝を目標にはしていたが、県2次予選に進出できる最低ラインはクリアできた。負けたことで今の力量、やらなければならないことが明確になった」という。選手個々が「やるんだ」という気持ちをいかに出せるか。先輩たちのいない穴を埋めながら、春への歩みが始まった。【橋本陵汰】 ◇ 2年連続のセンバツ出場を果たした市和歌山。その新チームの奮闘の軌跡をたどる。