アジアサッカー連盟再編の可能性はあるのか── オーストラリアはどうなる?
オーストラリア国内でAFC加盟の気運が持ち上がったのは2002年日韓W杯の後だ。時差が1、2時間という日韓でのW杯開催により、オーストラリア国内でのテレビ中継は大いに盛り上がり、サッカー人気が向上した。欧州からの移民が多いため、代表選手の多くは欧州リーグでプレーし、実力的にも大幅に向上していた。 すると、ときのオーストラリア政府は経済的なアジア戦略の一環としてAFC加盟を後押し。国を挙げてのロビー活動が実り、2005年にOFC脱退とAFC加盟が決定した。FIFAも速やかにOFCからAFCへの転籍を承認。オーストラリアは2006年1月からAFC加盟国となることが決まった。 2005年当時、FIFA理事、AFC理事として活躍していた小倉純二・日本サッカー協会名誉会長は、「オーストラリアはオセアニアで圧倒的な実力を示している。彼らのAFC加盟はアジア全体の強化につながるということで、各国が了承した」と説明していた(2005年にはオーストラリア国内プロリーグである「Aリーグ」が発足している。先のアジア杯は、Aリーグ誕生とAFC加盟10周年という節目の年の開催でもあった)。 けれども、オーストラリアのAFC加盟により、W杯出場という面で割を食うことになったのが西アジア諸国だった。出場国が現行と同じ32カ国になった1998年フランスW杯から2006年ドイツW杯までの3大会は、西アジア諸国からサウジアラビア(98、02、06年)とイラン(98、06年)が出たが、オーストラリアがアジア予選に参入した2010年南アフリカW杯と2014年ブラジルW杯を見ると、ブラジルW杯にイランが出場しただけ。中東勢は世界のサッカーシーンで置いてけぼりを食らう様相となってしまった。 さらに、ここにきて新たに持ち上がった問題がある。2018年ロシアW杯のアジア出場枠が現行の4.5枠から4枠に削減される可能性があるというのだ。これは、2011年にAFC理事を退任してからも各国理事たちとの親交が深い小倉名誉会長が、オーストラリアでのアジア杯視察中に得た情報であるだけに予断を許さない。小倉名誉会長は報道各社の取材に対し、「3月のFIFA理事会で各大陸の出場枠が決まるのではないか」との見通しを示している。 日本を含め、昨年のブラジルW杯でのアジア勢の惨敗ぶりは記憶に新しく、現行0.5枠であるオセアニアが1枠を求めるのは確実と見られている。これを敏感に察知した中東諸国が、元OFC加盟国のオーストラリアをAFCから外すという、加盟国再編の動議を出すためのムード作りを行っている可能性は否定できない。加えて5月に予定されているAFC会長選挙にもこの件に影響を与える可能性があるだろうとの見方もある。サルマン会長は2期目となる再選を目指している。 W杯出場枠問題ともリンクしてくる本件。日本としては水面下の情報を確実にキャッチし、AFC内での動きをしっかりと把握しておく必要がある。 (文責・矢内由美子/スポーツライター)