「働かないおじさんなのに、給料が高いのはおかしい」と言われた50代平社員の「仕返し」
減点主義を逆手にとって不和の種をまく
Aさんが若い頃から「○○さんが~と言っていた」と吹聴して周囲に不和の種をまいてきたのは、そうすることによって自分が得することを経験的に学んだからだと私は思う。いわば過去の成功体験があったからこそ、同じようなことをずっと続けてきたのだ。 その背景には、とにかく波風を立てないようにすることが日本の多くの企業で重視されてきたことがあると考えられる。聖徳太子以来の「和を以て貴しとなす」という伝統が脈々と受け継がれているのか、できるだけもめごとを起こさないようにすることが何よりも大切とされる。 おまけに、減点主義で評価されることが多く、いくら仕事ができても波風を立てる人は、協調性がないとみなされて上からあまり評価されない。当然、なかなか昇進できず、場合によっては干されたり排除されたりする事態になりかねない。そのためか、仕事で成果を出すことよりも、むしろなるべく問題を起こさないことに汲々とする人が大多数のように見受けられる。 Aさんもその一人なのではないか。しかも、減点主義を逆手にとり、「○○さんが~と言っていた」という発言によって周囲に不和の種をまくことを繰り返し、その結果もめごとが起こるたびに、ひそかにほくそ笑んでいたのかもしれない。もめごとを起こした人の評価が下がれば、自分自身の評価が相対的に上がると勝手に思い込んでいたとも考えられる。 この手の人はどこにでもいる。「○○さんが~と言っていた」という伝聞調で、○○さんがあたかも悪口を言っていたかのように伝えて、不和の種をまく。そのせいで、悪口を言われたと思い込んだ人物と○○さんの関係が険悪になる、場合によっては実際にもめごとが起こる事態になれば、してやったりだ。陰でにんまりとしながら、不和になった二人の間を取り持つような真似をして、自分の存在感を誇示しようとすることさえある。だから、「○○さんが~と言っていた」という類いの話を決してうのみにしてはいけない。 つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。
片田 珠美(精神科医)