【ムクドリ】なぜ駅前に?「ただ追い出しても、別の場所に移動するだけ」専門家が唱える納得の解決策
別の場所に移ればまだいいが、そのうち電線や看板などをねぐらにするようになることも。 「そうなったら、自治体の管轄から離れてしまう。電力会社やビルの管理会社に対策を頼まなくてはなりません。 ムクドリも電線などのように丸見えのところは不安なんです。けれど、ここでも大丈夫と学習すれば、そこに集まってしまいます」 ケヤキをねぐらにしていたムクドリは、ケヤキが落葉すれば郊外の竹林に移っていくが、電線をねぐらにすると1年中いるようになってしまうとか。 どうすればいいのか。 「全部を追い出そうとしなければいいんです。 商店街など住人に迷惑がかかるところの木だけ剪定して、ロータリーや公園などそれほど人に被害を与えない木はそのままにしておく。そうすればムクドリは迷惑のかからないところをねぐらにし、ほかの自治体に移ったりせず、ムクドリねぐらの拡散を減らすことができます」 剪定するときは丸くカットして、そこに鳥ネットをかぶせるようにする。ねぐらとなる木が減るようなときは、近隣自治体と相談しながら対策を進めることが大事だと越川さんは言う。 「ムクドリは3月下旬から巣作りを始め、4月中旬から産卵が始まります。ねぐらのムクドリの数が増えるのは10月ごろから。数の増える秋ではなく春のうちに剪定などの対策を行う必要があります」 ◆なぜ気にならない!? 表参道のケヤキ並木もムクドリのねぐらになっているけど…… しかし、ムクドリが問題になっているのは千葉県や埼玉県だけなのだろうか。 「いちばん多いのは関東圏。関西圏や愛知県にも、ねぐらが問題になっているところがあります。東京にもねぐらが問題になっている地域はけっこうあります。 気がついていないかもしれませんが、表参道のケヤキ並木もねぐらになっています」 気にしなかったせいか、歩道にフンが落ちているなんて気づかなかった。 「表参道のケヤキは立派なので、フンが葉で受け止められて、あまり歩道に落ちていないかもしれません。木が大きいと個体間の間があくので、駅前ほど問題になっていないのでしょう」 ひと晩中鳴き声が聞こえるのは、木の中で絶えず移動したり、1羽が鳴き出すと全体に広がるためではないかと越川さんは言う。 だったら、剪定するより、大きくケヤキを育てたほうがいいのではないかという気もしてくる。 「歳時記では、ムクドリは秋に分類されているように、昔の人はムクドリの群れを見て、秋がやってきたことを感じていました。そんな心のゆとりが今はなくなってしまったのかもしれません」 ムクドリと共存するためには都市づくりから考えないといけないと越川さん。 「ムクドリはネキリムシやイモムシなどの農害虫を食べてくれるし、木の実を食べてフンなどで種を落とす種子散布の役割も果たしている。 人間優先で考えるのではなく、共存する方法を考えなくてはなりません。 広い道路にゆとりをもってケヤキを植えれば、ムクドリが集まってきても、それほど問題にはならないでしょう。それに、なによりも、鳥もいない世界は怖いと思いませんか……」 越川重治 2016年まで千葉県立高校教諭。ムクドリやカラス、ツバメなど都市鳥の研究に携わってきた。都市鳥研究会副代表。ムクドリの調査・研究は40年以上になる。2017年度から自然観察大学講師としても活躍している。 取材・文:中川いづみ
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