サッカーパリ五輪目指すチームの「10番」鈴木唯人がデンマークで考えたこと 「孤独に戦うことにも良さを感じた」
パリ五輪出場を目指すサッカーのU―22(22歳以下)日本代表で背番号10を担う鈴木唯人が、今季デンマークの強豪ブレンビーに加入した。五輪イヤーを迎える大事なシーズンの新天地に、これまで日本人選手になじみの薄かった国を選んだアタッカーは「ドイツやベルギーに行く人が多い中、孤独に戦うことにも良さを感じた。サッカーにフォーカスできる環境がある」と強い決意を込め、新たな一歩を踏み出している。(共同通信ロンドン支局=田丸英生) 【写真】U―22国際親善試合のドイツ戦で攻め込む鈴木唯人
▽激動の1年 今年1月にJ2清水からフランス1部リーグのストラスブールに期限付き移籍し、激動の1年が始まった。シーズン途中に残留争いをするチームに加わるという難しい状況で、4月に待望のデビュー戦でゴールを決めたが3試合に途中出場しただけでシーズンを終えた。公式戦でアピールする機会すらほとんど得られなかったが、チームメートの元日本代表GK川島永嗣から多くのことを学ぶなど自らの成長を実感し「試合には全然出ていなかったが、得るものは多く今後のサッカー人生に間違いなく生きてくる。刺激の毎日で、結果以外で見たらすごく楽しい半年だった」と初の海外挑戦を前向きに受け止めた。 ▽「やっぱりこっちが向いている」 契約満了で7月に清水に復帰するとJ2で3試合に出場し、翌月にはデンマークのブレンビーへ完全移籍。「フランスに行ってから、やっぱりこっち(欧州)でやることが自分に向いていると思った」という強い海外志向が決め手となり、再び日本を飛び出した。
デンマークは欧州連盟(UEFA)が各国クラブの直近5シーズンの成績で算出するランキングで14位。日本人選手が多く在籍するオランダやベルギー、ポルトガルより格下に位置付けられる。ブレンビーはかつてラウドルップ兄弟やGKのP・シュマイケルといった世界的名手を輩出した名門だが、オファーを受けるまでは名前も聞いたことがなかったという。 3季前のリーグ王者とはいえ、今季は欧州チャンピオンズリーグなどのUEFA大会に出場していない。そんなチームでの再出発にも「抵抗はなかった。フランスも最初は正直どんなリーグか知らずに行ったので、どこを選んでもそれが正解だったと思えるようにすればいいだけ」と覚悟を決めた。 シーズン前半は先発定着を目指す立場で「今はチームメートの信頼を得る時期」と個を前面に出すプレーよりもチーム戦術に合わせることを重視する段階と捉え、冬季中断までで公式戦3ゴール。「レベルは来てみないと分からなかったが、正直フランスとあまり変わらない。デンマークだからといって、フランスのときより余裕を持ってできているわけでもない」と水準の高さを肌で感じた。コペンハーゲン近郊を本拠地とするブレンビーは、リーグ2連覇中の宿敵コペンハーゲンと並ぶ人気を誇る。ホーム戦は平均2万人を超える観衆が集まり、チームカラーの黄色と青に染まるゴール裏はサポーターの歌声で熱気に包まれる。