「バフェット指標」には2つの問題がある…モルガン・スタンレーが指摘(海外)
いわゆる「バフェット指標」は過去最高水準に達しており、株式市場が過大評価されている可能性を示している。 しかし、モルガン・スタンレーの調査によると、バフェット指標には2つの欠陥があるという。 世界的な売り上げの変化やデジタル化は、バフェット指標のような従来の株式市場の評価方法に対して課題を突きつけている。 株式市場が過去最高値で取引される中、ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)のお気に入りの評価指標も新たな高値を記録している。 バフェット指標(Buffett Indicator)は、アメリカの株式の時価総額をアメリカの国内総生産(Gross Domestic Product:GDP)に対する割合で測る指標であるが、2024年12月9日には約209%という過去最高値を記録しており、2021年8月に達成した200%の過去最高値を上回っている。 言い換えると、ウィルシャー5000指数(Wilshire 5000 Index)で測定されるアメリカ株式市場の総時価総額が約61兆ドル(約9150兆円)であるのに対し、年換算されたアメリカのGDPの約29兆ドル(約4350兆円)の2倍以上となっているということだ。 弱気な投資家たちは、バフェット指標が株式市場が過剰に評価されていることを示しており、調整が迫っていることを示すシグナルだと指摘している。 しかし、モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)の調査によると、バフェット指標は必ずしも最も信頼できる指標であるとは限らないという。 モルガン・スタンレーのカウンターポイント・グローバル部門(Counterpoint Global)のマイケル・モーブッサン(Michael Mauboussin)は、バフェット指標の欠点を2つ指摘した。ちなみにバフェット指標は、バフェットが2001年に経済・ビジネス誌のフォーブス(Forbes)の記事で紹介したものだ。 「第一の問題は、現在、アメリカの企業が過去の数十年に比べて、アメリカ国外からの売り上げが増えている点だ。GDPにはその売り上げは含まれていない。つまり、分子である時価総額は、分母であるGDPが反映する市場よりも、はるかに広い市場を示していることになる」とモーブッサンは述べている。 この指標が外国の売り上げを反映していないのは大きな問題だ。なぜなら、S&P500企業の売り上げの約40%は国際市場から来ているからだ。もしその売り上げがアメリカのGDPに含まれれば、バフェット指標は現在のような大きな警告サインを示さなかっただろう。 二つ目の問題は、現在の経済は過去の時代のものとは大きく異なっているという考えに関するものから来ているという。 「第二に、GDPはおそらく過小評価されている。というのも、物品やサービスの質や、新しい物品やサービスの価値を正確に測定できていないからだ。デジタル化が進むことによって、現在の測定は過去よりも難しくなっている」とモーブッサンは話している。 アメリカ経済において製造業が大部分を占めていた数十年前であれば、GDPをベースにした株式市場の評価指標は正確だったかもしれないが、現在ではそうではない。 最近のブラックロック(BlackRock)とエコノミストのデビッド・ローゼンバーグ(David Rosenberg)の研究もこの考え方を支持している。 「株式市場のセクター構成の変化は、進行中の変革を反映している。そのため、今日の指標を過去のものと比較するのは、リンゴとオレンジを比較するようなものだ」とブラックロックは2024年12月初めに述べている。 ローゼンバーグは2024年12月5日、「アメリカがテクノロジー中心の経済発展をしていることから、長年の弱気な見通しを再調整した」と顧客に宛てた書簡で述べている。 モーブッサンのバフェット指標に関する分析に従えば、過去に有効だった従来の評価指標は、現在の市場には適していない可能性がある。 モーブッサンは「他の多くの指標と同様に、現在と過去を比較する際には注意が必要だ」と言う。 バフェットは2017年のバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)の株主総会で、バフェット指標のような評価指標に関して、投資に適した時期を判断するための絶対的な指標ではないと考えていると話している。 「どの数字にもある程度の意味がある」とバフェットは話した。 「それがどれほど重要かは状況による。時には非常に重要で、時にはほとんど意味がないこともある。株式市場が過小評価されているか過大評価されているかを一つか二つの公式で決めるのは簡単ではない」 それでも、バークシャー・ハサウェイが3000億ドル(約45兆円)以上の現金を保有していることから、投資家やアナリストなどは、バフェットが現在の株式市場の評価に懸念を抱いているのではないかと推測している。
Matthew Fox