野田元首相、立憲新代表に返り咲き…心の支えとなった安倍晋三元首相の「勝者の助言」とは
「本気で政権を取りにいく覚悟だ。戦いは今日から始まる」 立憲民主党は、9月23日、臨時党大会で代表選の投開票をおこない、野田佳彦・元首相を新代表に選出した。野田氏は代表選後、冒頭のように政権交代への決意を表明した。 【写真アリ】野田佳彦氏が安倍晋三氏との思い出を回想すると、どこか悲しげな表情に 「代表戦勝利は野田さんにとっては感慨ひとしおでしょう。出馬表明で、野田氏が強調したのは安倍晋三元首相との関係でした。旧民主党政権で首相を務めた野田氏にとって、安倍氏は2012年衆院選で政権を奪われた因縁の相手。 その一方で、2022年に安倍氏が銃撃されて死亡した際は、国葬で弔辞を読むなど、安倍氏に対して “好敵手” としての思い入れも強かった。弔辞で『勝ちっぱなしはないでしょう』と訴えた野田氏は、今回の代表選出馬にあたり、『十数年経って、もう一回政権を取り戻すための道筋をつけることが私の役割ではないか』と語っていました」(政治担当記者) 2022年12月、安倍晋三氏の襲撃から約半年。本誌は野田氏の単独インタビューを敢行し、安倍氏との思い出を聞いた。野田氏が印象に残っていたのは、2012年12月26日、新総理となった安倍氏の皇居での親任式に、前首相として立ち会ったときだったという。このとき、野田氏は、直前の党首討論で解散期日を明言して解散総選挙に臨み、敗れている。 「親任式の前に、控室に2人だけでポツッと残されたんです。勝者と敗者ですからね。シーンとしちゃうんですよ。敗者の私には気が重い、残酷な空間です。せめて別々の部屋に入れられたほうが、気が楽だった。こっちは一言も口を聞きたくなかった。ところが、勝者である安倍さんのほうから近寄って来て『お疲れ様でした』と声をかけてくれたんです」(野田氏) 安倍氏は、さまざまな言葉で野田氏の労をねぎらったという。 「野田さんは安定感がありましたよ。自分は5年で返り咲きました。あなたにも、いずれそういう日がやって来ますよ」(安倍氏) 総理から “陥落” した野田氏にとって、この助言は心の支えとなった。 「私は “敗戦の将” ですからね。安倍さんのしたことは、ボクシングで、ノックアウト負けされた選手を勝者が称えるのと同じじゃないですか。勝者の奢り? いやいや、そうは思いませんでした。奢りなら、ああまで何度も何度も声をかけてくれなかったと思います。やっぱりそれは安倍さんの気遣いだったんです。でも、そのときは、素直に受け止める心の余裕はありませんでした」 時を経て、やがて安倍氏の心優しさに思い至る。安倍氏も同じように “敗北” を体験していることに気づいたのだ。 「体調を崩されて、第一次安倍政権は短命に終わった。安倍さんは、福田康夫新首相の親任式に入院先の慶応病院から駆けつけています。心も体も満身創痍だったでしょう。それでも、安倍さんはモーニングに着替えて親任式に臨まれた。その心境はいかばかりだったか。 安倍さんはプライドの高い政治家ですから、わずか1年で辞任を余儀なくされたことに、本当に忸怩たる思いがあったと思います。そのときの体験があったからこそ、同じように敗れた私に、ああして気遣いを示されたのではないかと思います」 あなたにも、いずれそういう日がやって来る――。安倍氏のこの “助言” は、野田氏にとって果たすべき “約束” となった。