《たった5kmの距離だった》ピーコさん、弟おすぎとの非業の別れ「たまに昔を思い出して笑顔に」晩年は近くの違う施設で最後の時間を過ごした
万引きが発覚、施設に入居することに
嘘をついていたのか、現実が分からなくなっていたのか。もはや、しっかりと問いただすことは叶わぬ状態だった。 そして、今年3月。決定的な事件が勃発した。買い物に訪れた店での万引きが発覚して窃盗罪で逮捕。余罪も判明したが、もはや善悪の判断もつかないピーコさんは、行政担当者と代理人弁護士の判断で、施設に入居することとなった。 「ただ、そのころに、たまに現実を認識する瞬間もあったようで、『弟とは違うところで』とのニュアンスの言葉を繰り返したそうです。悲しく寂しい“お別れ”でした」 この8月には、その2人で最後の3か月を暮らした自宅マンションも売却された。翌9月に先にピーコさんが逝去。現世での再会は叶わなかった。 この知人は、念を押すように付け加えた。「たまに昔を思い出せるときがあったのかな。機嫌が良くて笑顔の日もありました。きっと、お互いが元気で仲が良かったころのおすぎさんのことも思い出していたんだと思います」。 施設入居後のピーコさんは、もう面会もほとんど受け付けておらず、誰かと思い出話を共有することもなかったという。 「実は、お二人の施設は、車で10分ほどの近さで直線距離で5km未満。そんなに近くにいたけれど、認知症を患う同士のため、会って思い出話を語り合えることはできませんでした。つい数年前まで、あんなに頭が切れて冗舌だったお二人が、こんな最期を迎えるなんて…。でも、もう孤独と認知症にも苦しまないで済みます。ただただ、安らかに眠ってほしいです」 おすぎは、現在もグループホームで静かに余生を過ごしている。