阪神淡路大震災・20回目の1.17「10年+10年」としての20年/矢守克也・京都大学防災研究所教授
20回目の1.17──。阪神・淡路地域では、あの大震災やそこからの復興の歩みを振り返るとともに、あらためて災害への備えについて見直そうという機運が高まっている。ここでは、あえて、阪神・淡路大震災の発生10年目の年から、さらに10年が経過した時点として、「20年目」を見つめてみたい。筆者自身、大震災から10年目を期して取り組んできたことがいくつかあり、その成果と課題を検証することが、20年以降を展望することにもつながると思うからだ。
阪神・淡路にルーツをもつ知恵や思いが次世代へ
大震災から10年が経過した年、つまり2005年に筆者がスタートさせたことが3つある。 一つ目は、防災学習ゲーム「クロスロード」の取り組みである。これは、たとえば、「小学校の校庭に仮設住宅を建てるか否か-YESorNO?」のように、阪神・淡路大震災の被災地で実際に人びとが直面した難問を二者択一形式の設問とし再構成し、集団で議論する防災学習教材である。 幸い、その後広く活用いただき、東日本大震災の被災地でも役立てられた。また、教材のユーザーが作る全国組織の主催で、昨年12月には、神戸をはじめ全国12の会場をインターネット等で結んで「1000人クロスロード」というイベントも開催された。 二つ目は、「語り部KOBE1995」の活動である。これは、大震災の被災者が、やはり2005年に結成した震災の語り継ぎのための団体であり、筆者もお手伝いしてきた。10年目からのスタートであったため、当初から、次世代との連携に力を入れ、神戸で学ぶ大学生が中高齢の語り部さんの体験談を、絵本やビデオクリップなどに再構成し、それらの教材とご本人のお話を組み合わせた防災授業を実施するなどの活動を行ってきた。 語り部メンバーと大学生とで、東北の被災地の子どもたちを神戸に迎えたり、逆に東北の小学校を訪ねたりといった交流も実施してきた。昨年12月には、結成10年目のイベントを開催し、「20年後のことば、10年目のことば」と題した記念冊子も刊行した。 三つ目は、「災害メモリアルKOBE」と呼ばれる周年行事で、これは10年目以降毎年開催し、今年(1月10日開催)で10回目となる。 この行事では、たとえば、被災地の第一線で活動した消防士を父親に持つ女性(大震災当時7歳)が、その後自分自身消防士となるまでについて、父親とともに、震災後に生まれた今の小学生たちに語るなど、震災から10年以上が経過したからこそ成り立つ新しい語り継ぎのスタイルを模索してきた。 また、この女性には、上記の語り部活動で交流のある東北の小学校でも、大津波から3年目のその日に子どもたちに話をしてもらった。 以上に概観した3つの取り組みの特徴は、2つのキーワード、「インターローカル」(地域間の連携)、「インタージェネレーショナル」(世代間の交流)として集約できるだろう。 阪神・淡路にルーツをもつ知恵や思いが、防災学習ゲームという形で、大学生と被災者とが共作した教材という形で、あるいは、震災からの時間の中で成長した若者の自分物語という形で、他の地域や次の世代へと受け渡されていく。