住基ネットを振り返る/マイナンバーとの違いは?
住基ネットとマイナンバーの違い
では、散々な評価だった住基ネットと、マイナンバーの違いはどこにあるのでしょうか? もっとも大きなポイントは、その利用範囲の広さでしょう。住基ネットの情報は、氏名、生年月日、性別、住所だけに留まり、閲覧も役所内部に限定することを前提としていました。いっぽうマイナンバーは、国民ひとりひとりに固有の番号を割り当て、希望者にはICカードを配布。社会保険に関する情報照会や確定申告など、さまざまな手続きが個人向けのインターネットサービスを通じてできるようになる見込みです。 マイナンバーでは税分野や社会保障、災害対策といった多岐にわたる情報が共通の番号で管理され、行政事務の効率化のほか、税や社会保障に関する不正の防止も期待されています。また、法律の施行から3年後をメドに、民間での利用も視野に利用範囲の拡大が検討されます。 マイナンバーの導入には、初期費用だけで住基ネットの数倍となる約2700億円もの費用がかかると推定されています。運営費は年間200億~300億円といわれており、「IT業界を儲けさせるだけ」という批判も。管理は住基ネットを運用する「地方自治情報センター」を格上げして設立される「地方公共団体情報システム機構」が担い、早くも天下り問題を指摘するメディアもあります。 制度自体は、IT基盤を活用し行政の効率化が量られるとして、評価する向きも少なくありません。ただ、こういった電子政府化への動きはメリットがある反面リスクも多く、たとえば「住民登録番号」を導入している韓国ではネットを経由した詐欺事件が多く起きていると報じられています。また、国が個人の情報を把握し過ぎることに対する不安の声もあります。マイナンバーを活かした電子政府化の推進が掲げられるなか、解決すべき課題も数多く残っています。