【ダービー卿CT回顧】パラレルヴィジョンが見つけた適舞台と今後の課題 アスクコンナモンダは3着も収穫あり
パラレルヴィジョンの今後
2コーナーを迎えるこの地点ですでにペースが落ちていたわけで、スローは必至。大逃げの見た目に騙されてはいけない。エエヤンは耐久戦に持ち込んだわけではなく、単に自分のペースで進んだだけだった。ハナに行きかけたセッションが抑えすぎたゆえの大逃げ。少し大事に乗りすぎたようだ。今年のレース映像はハイペースだったのではと錯覚を起こしそうなので、ここはしっかり記憶しておこう。 あくまでスローのダービー卿CTだった。実際、残り800mは11.0-11.4-11.4-12.3で、エエヤンは理想的な加速で一旦、後ろを突き放したかにみえた。だが、最後の200mは12.3と時計を要してしまい、パラレルヴィジョンにつかまった。大逃げを一気にとらえる場面はインパクトが大きいが、これも見た目ほどのものではない。内枠と好スタートを活かし、最後に止まった逃げ馬をとらえた。パラレルヴィジョンへの過剰評価は禁物だろう。 とはいえ、これで中山マイルを連勝。変則的な大逃げがいても、落ち着いて好位から最後伸びてきたように充実期にあることは確かで、このコースへの適性も高い。 マイル路線は大レースが外回りや直線が長いコースばかりなので、もうワンランク上を目指すなら、広いコースでも結果を残せるようになってほしい。デビュー3戦で神戸新聞杯1番人気に推された好素材だけに、回り道はしたが、ようやく自分にとってベストを見つけた。マイル路線でひと花咲かせたい。
収穫があったアスクコンナモンダ
2着エエヤンは遅い流れに付き合って、リズムを乱すぐらいなら。そんなミルコ・デムーロ騎手の直感が冴えた。とはいえ、それでもペースは遅く、最後12.3と止まったのは物足りなさを感じる。おそらく、残り800~600m11.0が効いたようだ。 後ろは離れていたし、もう少しゆっくり仕掛けてもよかった。距離というより、いい脚を使える距離が短いタイプで、本質は中山のような小回り向きだろう。使いどころひとつだっただけに、もったいなかった。 3着アスクコンナモンダは、流れを考えれば3着が限界だったか。決して力負けではない。枠順を活かして上手に立ち回ったが、恵まれた先行勢には敵わなかった。 ここにきて重賞だとやや勝ち味の遅さを感じるが、3~4コーナーで動けており、自力で勝ちに行く競馬を徐々にできるようになったのは収穫だろう。勝ちに行く競馬をしても最後に甘くならない体力さえつけば、重賞タイトルも手にできる。決してこんなものではない。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬中心の文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳