太陽系の進化を語る南極の隕石、温暖化で研究不能に、今世紀末には最大25万個失われる恐れ
失われる地球と太陽系の記録
南極には、火星からやってきた隕石もある。中でも特に有名な「ALH 84001」には、数十億年前には火星は暖かく、表面に水が存在したという証拠を裏付ける鉱物が含まれている。 さらに、氷床の隕石には、かつては「太陽系初期に自由に浮遊していた塵のかけら」だった物質も含まれていると、英ロンドン自然史博物館の隕石専門家であるサラ・ラッセル氏は言う。 そうした岩石の中にはしばしば、宇宙空間にあったときに含まれていた氷が解けてできた水によって変質した鉱物が存在する。その変質した岩石で、研究者らは、地球に衝突した小惑星から、数十億年前に地球の海をつくった水がどのようにもたらされたかを研究できる。 隕石はまた、木星の巨大な重力が、太陽系のさまざまな領域の物質が混ざり合うのを防いだかどうかなど、太陽系の初期に起こった可能性があるその他のプロセスについての情報も提供してくれる。 南極の隕石は、地球上で最も風化が進んでいない宇宙岩石でもある。寒くて乾燥した環境が、隕石の保存を助けているからだ。結果として、南極の隕石はそれが形成された当時の太陽系の状況を表していると、科学者らは確信している。 南極からはまた、ほかの場所にはない独特の隕石が見つかると、ラッセル氏は言う。 そうしたものの中には、新しいタイプの小惑星に由来するものや、既知の種類の小惑星からの隕石であっても、地球まで到達した前例がなかったものなどが含まれており、隕石がいかに多様であるかが表れている。
「あまり時間はありません」
とはいえ、消えてしまう前により多くの隕石を見つけ出すのは簡単ではない。結局は「現場で足を使って探すしかない」と、米ケース・ウェスタン・リザーブ大学の惑星科学者ラルフ・ハーベイ氏は言う。 ハーベイ氏はまた、「今回の研究にたずさわった人々がやっている仕事は、隕石が見つかる可能性がある場所の限界を広げ、そうした場所がどのように変化しているのかを明らかにするうえで非常に有効です」と述べている。 ゼコラーリ氏は、同研究によって隕石が早い時期に消えると予測された地域を優先すべきだと語る。 「あまり時間はありません」とトレナール氏は言う。「人員を増やし、より多くの場所で隕石を回収する必要があります」
文=Theo Nicitopoulos/訳=北村京子