長内那由多の「2023年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 社会システムへの抵抗を続けた1年に
3. 『JUSTIFIED 俺の正義:クライムシティ デトロイト』
ハイコンテクスト化した物語を解きほぐし、毎週決まった時間にテレビを観る楽しみを甦らせてくれた娯楽作品の好調も“ポストPeakTV”の光景だった。AppleTV+の『ハイジャック』や信じられないほど面白い『窓際のスパイ』シーズン3(本稿執筆時点で完結していないため、泣く泣く選外)もいいが、ここでは本作の名前を挙げておきたい。2010年~2015年にかけて放送されたシリーズの最新作は、前作を観ていなくても問題なし。“行間”とは素晴らしい俳優(ティモシー・オリファントの艶っぽさ!)、酔わせてくれるようなダイアログ(原作はエルモア・レナード)にあり、遥か彼方の銀河系にはないのだ。
2. 『The Bear』(『一流シェフのファミリーレストラン』)シーズン2
Yes, chef! 下町にある小さなレストランの新装開店を1シーズンかけて描いた本作は、私たちの手でシステムを作れるのだと教えてくれた。自分自身に敬意を払え。世界に対してオープンでいろ。成長と変化の喜びを、テイラー・スウィフトを口ずさむ40過ぎのオッサンが象徴するなんて、最高じゃないか。
1. 『サクセッション』(『メディア王 ~華麗なる一族~』)シーズン4
今年、これ以上の作品はなかった。最高の演出、脚本。賞レースのカテゴリーが足りなくなるほどの素晴らしい演技アンサンブル。それに忘れてはならないニコラス・ブリテルの音楽。俗物たちの熾烈な権力争いに笑っていたはずが、最終回の痛烈な風刺に私たちは打ちのめされた。2023年を牽引した1本。こんな傑作が生まれ得るのがPeakTVだったのだ。
長内那由多(Nayuta Osanai)