76歳、日々を健やかに過ごす小さなコツ。大切にしているのは周囲との“ほどよい距離感”
木立のなかの小さな薬草店、長野県蓼科高原の人気ハーブショップ「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」を営むハーバリストの萩尾エリ子さん。今から約40年前、まだハーブが世間に認知されていない時代から、ショップという場で自然の力を暮らしに取り入れるアイデアを伝え続けてきました。 【写真】もとは開拓農夫の小屋だったという小さな薬草店 蓼科での日々を美しい写真とともに綴った最新刊『あなたの木陰 小さな森の薬草店』(扶桑社)も話題となっています。時を重ねても変わらず、明るくやわらかな笑顔で訪れる人を迎える萩尾さんに、これまでの道のりと、日々を健やかに過ごす小さなコツを聞きました。
ハーバリスト・萩尾エリ子さんのこれまでと、「健やかに時を重ねるアイデア」
まるで、絵本の世界に迷い込んだような、木立のなかの小さな薬草店──。約40年前に長野県蓼科高原にオープンした「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」は、日本のハーブショップの草分け的存在として知られ、今も多くの人に愛されています。
●青山のバー経営と、子育ての日々を経て。「空が広いね」と蓼科へ
東京に生まれ、結婚後は青山にて夫とともにバーを営んでいたという、意外にも都会派の萩尾さん。蓼科に移住を決めたのは、第一子の子育てとバー経営、さらに陶芸家としても活動し、慌ただしい日々をすごしていたときのことでした。 「当時は、大森の住まいと青山の店を行き来しながら子育てをしていました。それはそれは忙しい日々でしたが、なぜか自分が自分でないような、なににも実感が持てないような虚しさを感じるようになっていたんですね。たぶん、呼吸も浅かったのだと思います。 そんなとき、夫とたまたま蓼科を訪れたら、『空気が綺麗だね』『空が広いね』と、お互い気に入ってしまって。ちょうどそのころ、夫の友人が熱海に越していたことも、夫の決断を後押ししてくれたようです」 しかし、引っ越した後に萩尾さんを待ち受けていたのは、予想以上の厳しい自然。とくに冬の寒さには驚かされたのだそう。 「家もすき間風だらけでしたから、ひどいときはまつ毛が凍るほど寒くて。最近は移住を検討されているというお客様が増えましたので、私は必ず『家は、冬を見てから決めるのがおすすめですよ』とお伝えしていますよ」