連座制や政策活動費巡り火花 衆院政治改革特別委の論戦スタート
衆院政治改革特別委員会が26日、初開催された。与野党が自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正について見解を表明し、論戦がスタートした。岸田文雄首相は今国会での法改正実現を明言しており、後半国会の最大の焦点となる。自民は国会議員の責任強化などを優先させる姿勢を強調し、野党は裏金の全容解明や自民より幅広い分野の見直し案を提示。改革姿勢の温度差が鮮明となった。 自民の大野敬太郎氏は「いわゆる連座制の導入」として、政治資金収支報告書提出時に国会議員による「確認書」の添付を義務付け、不記載・虚偽記載への監督責任を明記した案を提示。外部監査の強化、オンライン化推進も協議の優先事項に挙げた上で「事案(裏金事件)とは必ずしも関係しない項目にも逃げることなく取り組む」と述べた。 立憲民主党の笠浩史氏は「お手盛りの甘い処分で幕引きするのは許されない」とし、裏金の真相究明と関係者の責任追及の徹底を表明。連座制に関し、会計責任者に加え議員にも収支報告書の記載と提出を義務付けて「共同責任を負わせる」とした。政治資金パーティー全面禁止も主張した。 野党各党が廃止を求める企業・団体献金は、立民が「腐敗、癒着の温床」、共産党が「金権腐敗根絶の核心」と自民を非難。自民は「企業・団体にも政治活動の自由が認められている」と慎重な議論を求めた。 政策活動費の使途公開については、自民は「公開になじまない部分がある」などとして消極的。公明党は使途公開の義務付けを主張し、与党内の隔たりが際立った。立民や国民民主党、日本維新の会は廃止や仕組みの見直しなどを求めた。 自公は与党案の取りまとめへ26日も実務者が協議した。大型連休後の早期合意を目指す。参院政治改革特別委は5月10日に初開催される。 (坂本公司)
自民は論点絞り予防線、野党には温度差も
政治改革論議の主戦場となる衆院特別委員会は、当事者である自民党の及び腰が改めて際立った。論点を最小限に絞り、不正の温床の指摘がある政策活動費のような「聖域」の議論は先送りしたいのが本音。片や野党も、与党との距離感を踏まえ一枚岩には遠い。各党が思惑含みの綱引きに腐心して実効性のある改正内容とならなければ、政治の信頼回復は図れない。 「政治資金は公開が大原則ながら、一定程度公開になじまない部分がある」 自民の大野敬太郎氏は特別委で、政策活動費の使途公開に後ろ向きな姿勢をにじませた。 各党の特性の違いを踏まえ「出版、機関紙販売事業、労働組合等の政治活動の透明性などの在り方を包括的に議論すべきだ」とも言及。連合の支援を受ける立憲民主党や機関紙「しんぶん赤旗」を発行する共産党などを暗にけん制した。 自民にとって党勢を支えるのは多額の政治資金。「政治資金を透明化するほどプライバシーを気にし、献金をためらう人が増えると資金が減る」という党内の根強い懸念を、大野氏の発言が映し出した。 公明党は議員の責任強化の点では自民と歩調を合わせるが、政策活動費などでは一線を画し、透明性確保を前面に出す。自民に批判が高まる中「公明まで泥をかぶるのは避けたい」(幹部)との本音が透ける。 野党サイドは、自民との対決を鮮明にする立民と、法改正実現で与党との妥協点を模索する日本維新の会とで温度差がある。 立民幹部は「高めのボールで自民の消極姿勢を浮き彫りにする」と戦略を明かす。企業・団体献金や政策活動費の廃止に加え、基盤が弱い党所属議員の慎重論を押し切って政治資金パーティーの全面禁止も改革案に掲げたのは、自民の党勢をそぎたい思惑からだ。 維新は、先駆けて改革を訴えてきた調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の透明化を先導し、存在感を高めたい構えだ。 近く与党案をまとめる自公に対し、野党は調整の難航が予想される。立民は政策活動費廃止などを旗印に「自民包囲網」を主導したい考えで、野党共同での改正案提出も模索する。 一方で、連携が不可欠の維新は立民案を「与党も受け取れないビーンボール(危険球)では話にならない」(遠藤敬国対委員長)と距離を置く。むしろ自民側と水面下で落としどころを探っており、両党の目線は一致していない。 (大坪拓也、岩谷瞬)