レパトリ減税は円安抑制の妙手となるか?企業が稼いだ海外利益の還流は「最後の砦」に
■ 大成功だったブッシュ政権のレパトリ減税 もちろん、これほど強硬なやり方でなくとも、「期限を区切ってインセンティブを与える」という時限式の取り組みは実際に米国で成功した実績がある。典型的に思い返されるのが2005年にブッシュ政権が実施した米国の本国投資法(HIA、レパトリ減税)である。 当時の米国でも、多国籍企業が海外子会社で稼いだ利益を本国へ還流させるにあたって、所在国と本国(米国)で二重課税されており、「米国外に留保される企業利益」の存在が争点になっていた。 こうした米国外に滞留する企業利益を米国内に還流させ設備投資や雇用、自社株買いなどの原資にすることを狙ったのが、ブッシュ政権のHIAであったと言われている。 こうした資本フローは必然的に外貨売り・ドル買いを伴うため、為替市場においてHIAは「成功したドル高政策」として知られている。 ブッシュ政権は、2005年に海外子会社から米国への送金に関する税率を1年間限定で35%から5.25%に大幅に引き下げる策を決定した。引き下げ幅が大きく、しかも1年間という時限措置であったことから、その効果は絶大で2004年から2005年にかけて法人税額は急増している(図表(2))。 具体的には2002年から2004年の3年間平均で1564億ドルだった法人税収入は、2005年にその約1.7倍となる2783億ドルまで急増している。それだけ米国内へ還流された額が大きかったことが分かる。 【図表(2)】 この際に還流されてきた利益の使途は、その多くが自社株買いであったとされ、実際、2005年の米株は上昇している。また、1年間限定で集中的に資本回帰を促したことで、2005年の為替市場ではドル全面高が引き起こされ、名目実効および実質実効ベースでドルは+6%以上上昇し、対円では103円弱から118円弱まで上昇している。 現在、円安に悩む日本でレパトリ減税を求める論調の背景には、この先例への意識があると言っていいだろう。