「親はないものと思え」江戸っ子の父菊五郎から慎重派の息子菊之助への教え…歌舞伎史上初2人の菊五郎
来年、「菊五郎」が2人になる。松竹は27日、都内で会見し、歌舞伎俳優・尾上菊之助(46)が、来年5月に「尾上菊五郎」の8代目を襲名することを発表した。同時に、菊之助の父で当代(7代目)尾上菊五郎(81)は芸名を変えることなく、「菊五郎」を全うすることも明らかにした。「菊五郎」は歌舞伎最高峰の「市川團十郎」に次ぐ大名跡。同時期に大名跡の役者が親子で2人存在するのは約400年の歌舞伎史で初めてだ。 【イラスト】音羽屋緑威関係図 * * * * 「おめぇ、継げよ」。一見乱暴な表現だが、息子に重圧をかけまいとする菊五郎の優しさ、江戸っ子らしさを感じた。実は年明けのインタビューで「もう息子に全部渡したからね」と襲名をほのめかしていた。 思考性が強く、慎重派の菊之助には学者肌の一面がある。この日、「襲名」の「襲」の字の意味について触れ「引き渡す、受け渡すと同時に衣を重ねる、という意味もあります」と説明したことにもそれが表れていた。父の考えを少しでも代弁したい思いで発したのだ。 菊五郎は息子に幼いときから「親はないものと思え」と言い続けてきた。子どもが舞台で失敗すれば、自分が恥をかく。勇気のいる育て方だ。先輩にかわいがられ、先輩に教わることの大切さを伝えてきた。精神的支柱である7代目の大きさにぶつかりながら、菊之助は8代目として存在感を増していかなければならない。(内野 小百美)
報知新聞社