いまさら! スズキ・ジムニーシエラJB43W ドアミラー電動開閉不良修理日記 3/4・分解~部品交換編 第17回
ドアミラー修理記事第3回。前回は車体からミラー本体を取り外すところまでお話しした。第3回はいよいよ分解して中身の部品交換を行なう。 TEXT/PHOTO:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi) 【他の写真を見る】ドアミラー開閉不良の原因はこれだ!
本格作業突入
前回、スタートから完了までの作業順序は大きく分けて・・・ 1.車体からのミラー本体外し 2.分解してギヤ交換 3.組み立てて車体取り付け の3つと書いたが、今回は2.の部品交換作業ついて解説していく。 作業は部屋で えーっと……前は車体からミラー本体をおっ外したところで終わったんだっけ。ここから先の作業は部屋に持ち込んで進めることにしましょうか。 というのも、なかには車体についたまま分解作業を行うひともいるようだが、小さなねじやギヤ部品を地面に落とそうものならそのままなくしてしまう可能性があるからだ。私のような不器用自認派は屋内で行なうほうがいい。 横山やすしの「めがね、めがね」みたいに地面を這いずりまわった挙句、見つからなかったらその時点で作業中断、予定外の結果となってしまう。 2.分解してギヤ交換 格納ユニットばらし さて、部屋に持ち込んだらいよいよ分解だ。 敷いた新聞紙の上で作業しよう。 電動格納ユニットは運転席から見たときの裏手=カバーを外した側の三角ベース根元部にある。ミラーを開閉する割に、ユニットの占めるスペースは、全体の大きさからすると割と小さい。 ここは上半身が3つのねじで固定されるふたになっているので、ドライバーでまわして外すのだが、三角ベース側から入り込んでいるケーブル束と、入り込んだ後のケーブルがミラー調整用モーター手前でフックにまとめられていてゆとりがないため(次写真参照)、そのままの状態で行なうとばらし作業に制約が出てくる。 私はユニットふたを外してからわかったのだが、みなさんが行なうときは、先にケーブルを三角ベースから本体側へたぐり寄せ、フックにひっかけられたケーブルもほどいてゆるゆるにすると同時に、ついでに本体から三角ベースを外してしまうことをおすすめする。 本体とベースは、ベース下3つのねじで接続されている。 ふたを外すと・・・ ごらんのとおり。 ふた側にモーターと基板が、本体側には本体を定位置に固定するばねとギヤが所せましとぎっしり詰め込まれている。 モーターなんか「おまえはタミヤのプラモデルに使うマブチモーターか?」と思うほどちっちゃい(モーターそのものの写真がなくてゴメン。)。ドアミラーを手で開閉するとき、けっこうな力が求められるが、これはばね力で固定されているからである。それをこんなちっちゃなモーターで動かしていたなんて、ギヤでトルクを増幅させているとはいえ、よくばね力に打ち勝って開閉できるなと感心する。 問題のギヤは写真奥側で縦に嵌められている。手(というより指)は入りにくいし、ドライバーの先でこじるのもやりにくいので、ここは先の曲がったピンセットで引っ張り出すといい。 外した破損ギヤがこれだ。 破損しているのは軸部分。どこかにあるはずの破片が見つからなかったのでどこに消えたかと思ったが、潤滑用のシリコングリスの白と同化して見えないだけだった。 潤滑用のシリコングリスを取り除き、破片、金属のシャフトギヤもろもろを取り出してそれぞれからグリスを拭き取ったら全容が見えてきた。 樹脂ギヤ中心の軸受け部分は楕円になっている。正確には直線とカーブの組み合わせだ。この楕円穴に、金属シャフトの楕円部がはめ込まれることによって一体化、金属シャフトが受け取ったモーター回転をシャフト反対側で直結している樹脂ギヤを介して本体側ギヤに伝え、ミラー本体が開閉するという仕組みだ。 樹脂ギヤの楕円軸が割れれば金属シャフトは空回り・・・回転が伝達されるはずはなく、したがってガリガリ音が鳴るばかりでミラーが開閉しなかったのは当然。これが今回の故障の正体だ。 思えば納車間もない頃から、開閉時にキーキー音が発生していたが、これも何かの予兆だったのだろう。だからといってその音がどこから出ていたのか、構造を見てもわからなかったが、左ミラーは過去もいまも異音を発してはいないし、動きも正常なので、右ミラーの開閉不良と音は何らかのつながりがあったと見ていい。 案外、原因はギヤ強度不足だけではなく、製造時に注入する潤滑グリスの不足による潤滑不良も考えられなくはないと思った。 交換作業 開閉不良の原因がつかめたところで交換だ。 実はこの時点でまだ届いた部品の封を開いていない。 ここで歯数の違う部品が入っていたということになればとんだお笑い記事になっていいのだが、中を開いたら注文した純正同等部品がきちんとふたつ入っていた。ちぇっ、つまんないの。 この新しいギヤに金属シャフトを差し込む。 タミヤのプラモデルで、マブチモーターにピニオンギヤを差し込むときと同様、木づちか何かで叩かなければならないのかと思ったがそのようなことはなかった。 さきの写真の金属シャフトの両端にある小さな金属パーツは、シャフトを本体にセットするための台座にしてシャフト回転軸だ。 作業に熱中していたのですべてを組付けたときの写真を撮るのを忘れた(撮り忘れをする人がみんカラ整備手帳に多いが、その気持ちはよくわかる!)が、樹脂ギヤを挿した後、シャフト両端にこのパーツを組付けた状態で潤滑グリスを塗り、本体の元あった場所に差し込む。 そのとき、ふたつのパーツの向きを揃えた状態で本体側の開閉用ギヤとかませなければならないので、ここだけがちょっと作業しにくいが、ぐっと押し込んだら入り込んだのでそれほど苦労はしない。 また、差し込んだ後もギヤ同士がっちり組み合わされるわけではなく、少々ガタがあり、きちんと作動するかどうか不安になるが、ここで考え込んでも仕方ないので無視して先に進めることにした。 本体に一式セットしたら、また壊れて分解なんていうことにならないよう、万全を期してこの段階でも潤滑グリスをたくさん塗っておこう。塗るというよりは、ギヤスペースいっぱい、ぬったぬたのめっためたに充填するという感覚だ。 次に白い仕切り板をかぶせ、モーターと基板がついたままふたをかぶせ、ねじ3本を締めて開閉ユニット部の補修は完了。 緩めておいた配線を元に戻し、さきほど外した三角ベースを逆の順序で組みつけ、車両から外した直後の状態に戻して部屋での作業はおしまい。 もうひとつ、クルマを大事にしたいなら ところで・・・ カバーやミラー、そしてミラーを外して初めて露出する本体内部は黒いほこりがいっぱい付着している。 ミラー側ならそのすき間からまわり込んで入るのはわかるのだが、外すのに苦労したほどぴったりはまっているカバーの裏およびその対面側にまで、「いったいどうやって忍び込んだんだ?」と首をかしげるほど、ほこりが全面的にまとわりついている。 ふだん外で風雨にさらされながら、車内で風雨にさらされずにいるドライバーに後方視界を与えてくれるドアミラーだもの、これら部品をほこりまみれのままクルマに戻すのはあまりにかわいそうだ。せっかく車体から外し、ばらしたのなら、そこかしこのほこりをこの機会に取り除くべし。 ミラー本体部は補強のためのリブが多数あるので完全にとはいかないが、パーツクリーナーを吹き付けてできるかぎりウエスでこすり落としてあげよう。 車体色カバーは台所で使う洗剤を用い、お皿を洗う要領で洗車スポンジでやさしくこする。 周囲の溝部分が意外と落ちないので、私は洗車時に細かい部分の汚れを落とすブラシでしつこくこすったが、洗い終わったらもともと表面傷がないこともあり、新車時同様にきれいになったものだ。 さだまさしがかつてダスキンCMのキャラクターだった頃、ラジオCMの中で 「モップについてくるあの灰色のほこり、ありゃあもともとは何だったんですかねえ?」 といっていたことがあるが、この黒ほこりだって、外を歩いているときは意識しないのに、こいつはいったい何者で、どこからやってくるのだろう? とそんなこんなをしているうちに1日目は夜遅くになってしまったので、車体への取り付けは翌日まわし。 話は次回につづきます。 また次回お逢いしましょう。
山口 尚志