彫刻家イサム・ノグチの“遺作”公園で楽しむ音楽とホワイトクリスマス
【北海道・札幌】世界的に活躍した20世紀を代表する彫刻家の一人であるイサム・ノグチ。彼の“遺作”ともいえる公園が札幌市東区にあるモエレ沼公園です。そのモエレ沼公園で19日から、さまざまな音楽やスノーキャンドルを楽しめるイベント「モエレのホワイトクリスマス2015」が始まりました。20日まで。 【写真】52万個の電球が冬の札幌を演出 「ホワイトイルミネーション」始まる
公園全体を「一つの彫刻作品」に
モエレ沼公園は1982(昭和57)年に着工しましたが、完成は2005(平成17)年。ノグチは「公園全体を一つの彫刻作品とする」というコンセプトのもと、およそ188ヘクタール(東京ドーム40個分)という広大な土地に都市型公園を設計、自然とアートが融合した公園となりました。 実はノグチが札幌を訪れたのは1988年で亡くなった年と一緒。ということは、設計こそしたものの、完成形を見ることなく天国へ旅立ったことになります。札幌にノグチがやって来ることを聞いた札幌市は、ノグチの彫刻を置くいくつかの候補地を提案しましたが、ノグチが選んだのはすでに工事がスタートしていたモエレ沼公園の再構築でした。 広大な土地のいたるところに彫刻が配置されているモエレ沼公園ですが、その中でも特徴的な建築物といえば『ガラスのピラミッド』。I.M.ペイという、仏ルーブル美術館の『ガラスのピラミッド』を設計したノグチの友人へのオマージュになっている建築物です。
直前の大雪で“ホワイト”クリスマスに
このクリスマスイベントでは、『ガラスのピラミッド』を舞台にアマチュアミュージシャンがコンサートを行ったり、ピラミッド前庭でスノーキャンドルの製作が行われたり、年齢を問わず楽しめるイベントを開催。実はこのピラミッド、モエレ沼公園のグランドオープンの2年前、2003(平成15)年にオープンしており、今年で13回目のクリスマスイベントとなりました。折しも、観測史上初となる12月の積雪ゼロを記録した札幌で大量の雪が降った後に、ホワイトクリスマスと銘打つこのイベントが開催されたとあって、スタッフの方々もホッと胸を撫でおろしたと思いきや……。 「毎年『モエレのホワイトクリスマス』の時期には雪が積もっているので、そんなに心配はしていませんでした」と同公園・学芸員の宮井和美さん。「『ガラスのピラミッド』独特の響きを楽しんでもらうコンサートがメインですので、今年も無事開催できて良かったです」と話していました。
「ガラスのピラミッド」の独特の響き
『ガラスのピラミッド』はその名の通り全面がガラスなので、他のホールやライブハウスでは味わえない、天然の柔らかいリバーヴが独特の世界を作り出します。筆者はいろいろな場所でライブを見てきていますが、これと同じ響きを持っている会場はないと断言できます。 ちなみにモエレ沼公園は休園日がなく、東入口ゲートは通年開放されています。また、夏にはライトアップと噴水の融合が楽しめる『海の噴水』など、この場所ならではの施設もあります。札幌の中心部からはちょっと離れていますが、観光客の方にもおすすめの公園ですので、是非足を運んでみてください。 (北海道観光マスター・橋場了吾)