【解説】Awkmiu(オークミュー)とは?メンバー本人談から紐解く、詳細プロフィールや人気曲「アロー」、新譜『されど空の青さを知る』について
活動開始1年足らずで『SUMMER SONIC 2023』OSAKAのオープニングアクトに抜擢。さらにTVアニメ『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』エンディングテーマ「アロー」を担当するなど、注目度が高まっている4人組バンド・Awkmiu(オークミュー)。 写真:Awkmiu メンバー写真 これまでのキャリアやバンド名の由来、新作EP『されど空の青さを知る』について、メンバー全員参加のインタビューをもとに紹介する。 ----- ■より良い音楽を届けるため。Awkmiuの歩み ◎Awkmiu(読み:オークミュー) ・結成日:2018年8月 ・再始動日:2022年5月 ・改名日:2023年2月11日 ・メンバー:シキ(Vo)、Aki(Key)、カヤケンコウ(Ba)、関根米哉(Dr) ・前バンド名:魅惑ハレーション ・・・ ◎バンド結成のきっかけは音楽サークルでのコピーバンド 同じ大学の音楽サークルに所属していたシキ(Vo)とカヤケンコウ(Ba)が邦楽ロック系のコピーバンドを組んだことをきっかけに、“オリジナル曲を持つバンドを組みたい”というカヤの意向を受け、2018年8月、ふたりは前身バンド・魅惑ハレーションとしての活動をスタートさせた。 同じサークルでカヤとも面識のあったAki(Key)は、当初は裏方スタッフとして、同バンドの運営を手伝っていたが、カヤとシキからの“お願い”というかたちでプレイヤーとしても協力することに。 しかし、ドラムが脱退。当時を振り返ってシキは「バンドを続けられないかも…」とバンドを終えることまで考えたそうだが、そんなピンチを救ったのがレコーディングエンジニアとしてサポートしていた関根米哉(Dr)である。 彼らの抜きん出た演奏力や出自の違う各メンバーの音が組み合わせって生まれるサウンドに「絶対に(バンドを)続けたほうが良い!」と、加入を決意。そして、Akiも時を同じくして正式メンバーとなり、2022年5月、現在のラインナップが揃った。 ・・・ ◎“Awkmiu”に込められた意味 気持ちをあらたに、この4人で活動していくのだと2023年2月11日にバンド名を“Awkmiu(オークミュー)”に改名。 “Awkmiu”というネーミングは、Awkward(不器用な)とフランス語のmieux(より良い)を掛け合わせた造語で、「不器用ながらもより良い音楽を届けたい」という思いが込められている。 また、言葉遊びに長けた彼ららしく、前身バンド名からのアナグラムになっているのも興味深い。 シキは「“オーク”はちょっとカクカクした響きで、“ミュー”は丸いイメージの音。その両方があるのも気に入ってますね」と、バンド名の言葉の響きも気に入っていることを教えてくれた。 ・・・ ◎楽曲制作、ライブ活動と精力的な活動を見せる現在 2023年2月12日発表の配信楽曲「どくどく」を皮切りに、「avanlanche」「color」と新曲を次々に発表。TVアニメ『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』エンディングテーマとして制作された「アロー」も、バンドの知名度を大きく上げるきっかけになった。 楽曲制作にとどまらず、Awkmiuは都内を中心にライブ活動も精力的に展開。活動開始1年足らずで『SUMMER SONIC 2023』OSAKAのオープニングアクトに抜擢されたことも話題を集め、ライブシーンでもめきめきと存在感を放っている。 そして、2024年3月20日にはEP『されど空の青さを知る』を発表。 「glider」(J SPORTS 高校ラグビーテーマソング)を含む本作は、Awkmiuの独創的な音楽性、個性溢れる4人のメンバーによるバンドサウンドをしっかりと堪能できる作品に仕上がっている。本作によってこのバンドの豊かな音楽世界はさらに幅広いフィールドへと浸透しそうだ。 ----- ■Awkmiuが鳴らす“Solid Pops”とは? 圧倒的なオリジナリティとリスナーを魅了するポップネスを共存させたAwkmiuの音楽。そのスタイルを端的に示すフレーズが、4人が掲げる“Solid Pops”である。 「“Solid Pops”はバンドのロゴを作ってくれたデザイナーの方が最初に使った言葉なんですが、この言葉を初めて聞いた時に『たしかにそうだな』と思ったんですね。ポップスなんだけど、しっかりカドがある。柔らかいだけではなくて、ちゃんとトゲがある。それは自分たちがやろうと思っていた音楽で、すごく納得できた言葉だったんです」(シキ) 軸となっているのは、シキが生み出す歌。まるで映画のワンシーン(もしくは演劇の一場面)のような鮮やかな光景、そのなかに存在する登場人物の感情をビビッドに描き出す歌詞はすでに唯一無二だ。また、独特のフロウ(言葉とメロディの組み合わせ方)も彼女の大きな武器だろう。 「シキは舞台を経験しているからか、台詞をしゃべるように歌っているような感覚があって。歌のリズムの取り方もすごく独特だし、良い意味で異質。それがこのバンドの特徴になっていると思います」(関根) 4人のプレイヤーとしての個性が融合したバンドサウンドも印象的だ。 幼少期から舞台などで活躍してきたシキ、3歳からクラシックを学び、ジャズやR&Bにも造詣が深いAki、ブラックミュージックをルーツに持つカヤ、数多くのバンドのサポートをつとめる関根。異なる音楽的背景を持った4人が生み出すアンサンブルは、ライブでもしっかりと発揮されている。 「まだまだライブの経験は少ないですが、2023年の年末くらいから少しずつ楽しめるようになってきました」(シキ) 「これまではひとりで演奏する機会が多かったぶん、こうやってバンドの一員としてステージに立つ…仲間と一緒に演奏することの楽しさを実感しています。ライブでは、その場の“生感”を大事にしたいと思っています」(Aki) ----- ■音楽的出自がまったく違う面白さ。メンバーを深堀り! ◎シキ ・出身:東京都 ・血液型:A型 ・担当:ボーカル、作詞、作曲 ・影響を受けた音楽、アーティスト:『エリザベート』『モーツァルト!』などのミュージカル音楽 ・・・ 作詞・作曲を手がけるシキは、まさにバンドの核。中性的なイメージをまとったボーカル、楽曲に込められた風景や感情をリアルに映し出すボーカル表現も素晴らしい。 シキの音楽的ルーツは、『エリザベート』『モーツァルト!』などのミュージカル音楽。彼女自身も舞台の経験があり、まさに血肉になっていると言っていいだろう。 「Awkmiuで活動するようになって、ルーツに戻ってくるような感覚もあって。小さい頃から舞台の音楽やオーケストラをよく聴いていたので、シアトリカルというか、展開がしっかりあって、スケールが大きい楽曲が好きなんですよ。そういう曲をこのバンドでもやりたいと思うし、自分のなかから出てくるもののほうが説得力も強くなるのかなと」(シキ) ----- ◎Aki(アキ) ・出身:ニューヨーク ・血液型:O型 ・担当:キーボード ・影響を受けた音楽、アーティスト:クラシック音楽、ジャズ、フュージョン、B’z ・・・ 3歳からクラシック・ピアノのレッスンを受けはじめたAki。いっぽうでB’zのファンだという彼は、稲葉浩志(Vo)と松本孝弘(Gu)がフェイバリットに挙げていたジェフ・ベック、ラリー・カールトンなどフュージョン系のアーティストに触れたことをきっかけに、クラシック以外の音楽に興味を持ち、大学ではジャズやR&Bを演奏するサークルに参加した。 その後、上原ひろみ、チック・コリア、スナ―キー・パピーといったジャズ系の音楽家にも傾倒し、自らの演奏の幅を広げてきたという。 「高校まではピアノだけだったんですが、大学でキーボードも弾くようになって。そのふたつをかけ合わせながら、自分らしい演奏とは何か? ということを、Awkmiuを通じて作っているところですね」(Aki) ----- ◎カヤケンコウ ・出身:東京 ・血液型:A型 ・担当:ベース ・影響を受けた音楽、アーティスト:マイケル・ジャクソン ・・・ カヤケンコウの音楽の原点は、マイケル・ジャクソン。 小学生の時に観た映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』や名曲「スリラー」のホラームービー風のMVに衝撃を受けたという。 「元々ホラー系は怖くて苦手で、『スリラー』はあんなにゾンビが出てきたり、怖い要素もあるはずなのに、コミカルな要素やワクワクする音楽のおかげで楽しいが勝ちました。マイケルがとにかくカッコ良くて、小さい頃はずっとマネして踊ってましたね(笑)」(カヤ) 高校の文化祭で先輩がバンドをやっているのを見て、ベースを手にしたというカヤ。友達と一緒にバンドを組み、様々な楽曲をカバーするなかで、マイケルの楽曲のベースラインを再発見。そこからブラックミュージックに傾倒していった。 「大学ではAkiさんと同じサークルだったんですけど、R&Bなどに触れているうちにさらにブラックミュージックが好きになりました」(カヤ) ----- ◎関根米哉(せきね まいや) 出身:埼玉県 血液型:A型 担当:Dr 影響を受けた音楽、アーティスト:ファンク、邦ロック、マーチングバンド ・・・ ミュージシャンの父を持つ関根は、幼少期からファンクなど様々な音楽に触れ、中学から地元の友達と一緒にバンド活動をスタートさせた。高校ではマーチング部に所属し、パーカッションを担当。 「『ミス・サイゴン』などの舞台音楽をアレンジして演奏したり、いろんなジャンルの音楽を知れたことも良かったです。高校時代は、音大受験のためのレッスンも受けていましたね。生(のドラム)、打ち込みに関わらず、今もリズムの研究はずっと続けています」(関根) これまでにOfficial髭男dism、SOMETIME’Sなどのサポートをつとめ、プレイヤーとしての豊富なキャリアを持っている。レコーディングエンジニアとしての一面やプレイヤーとしての豊富な経験を活かし、楽曲のアレンジやライブの進め方などにおいても中心的な役割を担っている。 ----- ■『ライザのアトリエ』で注目を集めた「アロー」 TVアニメ『ライザのアトリエ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』エンディングテーマとして制作された「アロー」は、Awkmiuの知名度を上げたターニングポイントであると同時に、このバンドのポップな側面がしっかり表現された楽曲だ。 ドラマチックなメロディライン、4人の演奏センスが響き合うバンドサウンド、“まだ見つからない果てを目指すよ”という歌詞がひとつになった一曲だ。 「『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』は自然豊かな場所が舞台になっていて、主人公の少女がやりたいことを見つけて冒険に出かけるストーリー。すごく平和なイメージがあったので、それに沿うような楽曲にしようと思っていました。イントロから初夏の匂いも意識していましたね。アニメに合わせて曲を作るのも楽しかったし、“絵”が見えていたのですごくやりやすかったです」(シキ) 海辺の洞窟や海岸を背景にしたストーリー性のある映像、美しい夕陽を浴びながらの演奏シーンなどを軸にしたMVも特筆すべき点だろう。 「佐渡島で撮影したんですが、すごく楽しかったですね。風景がとにかくきれいだったし、アニメの世界観ともすごく近くて。あの場所(海辺)に楽器を置いて演奏することは、おそらく最初で最後でしょうね(笑)」(関根) ----- ■新EP『されど空の青さを知る』 先日、2024年3月20日に発売されたEP『されど空の青さを知る』には、配信シングル「楽園はいらない」、J SPORTS 高校ラグビーテーマソングに起用された「glider」などを含む全7曲を収録。 EPのタイトルは、「井の中の蛙大海を知らず」の続きである「されど空の青さを(深さ)を知る」に由来している。 シキによるライナーノーツにあった「今回の制作を通して、バンド全体がAwkmiuのポップスの入り口にやっと立てたと思う」という言葉通り、Awkmiuにとっても大きなポイントとなる作品だ。 「まったく違う場所に出てきたわけでなくて、これまでの活動の地続きにあるEPだと思っています。ずっと井戸の中にいて、“どうやったら上がれるだろう?”と考えているような状態が長く続いていたんですけど、ようやく上を見れるようになったのかなと」(シキ) “喜劇的な地獄”をモチーフにしたという「楽園はいらない」、東京の街の風景を切り取った「ブリーチタウン」、Awkmiuにとって初めてのラブソング「スプートニク」など、色彩豊かな楽曲が揃った本作。シキは「歌詞の解像度が上がってきた感覚がある」と語る。 「歌詞を書く時は、まずひとつの光景を思い浮かべることが多くて。『ブリーチタウン』の場合は渋谷のスクランブル交差点のマツキヨのところで靴紐を結んでいる場面ですね。『スプートニク』は自分が思っていることを素直に書けた曲。そういう書き方をしたことがなかったので、違うドアが開いた感覚がありました」(シキ) また、様々なジャンルを融合させた独創的なバンドサウンドもさらに進化。 「『ブリーチタウン』では、生で叩いたドラムを後からすべて打ち込みに入れ替えて。逆に『楽園はいらない』はデモ音源の複雑なドラムをどれだけ再現できるか? というアプローチ。曲によっていろいろなアレンジに挑戦できました」(関根) 「『楽園はいらない』では、米哉さんのドラムに対して、どういうベースを弾くか? をすごく考えて。このEPの制作を通して、技術的にも知識の面でも一段階上がれた実感があります」(カヤ) 「EPの制作するにあたって、改めて“Awkmiuはどういうバンドなのか?”とメンバーやスタッフと話し合ったんです。他のバンドとの大きな違いは、ギターがいなくて、ピアノがいること。そのことを踏まえて、自分には何ができるか? と追求した制作でした」(Aki) ----- ■東名阪ツアー『Awkmiu LIVE TOUR “HEKIREKI”』決定 5月にはEP『されど空の青さを知る』を引っ提げた東名阪ツアー『Awkmiu LIVE TOUR “HEKIREKI”』を開催。 『Awkmiu LIVE TOUR “HEKIREKI”』 5/03(金・祝)愛知・ell.SIZE 5/18(土)大阪・南堀江knave 5/31(金)東京・代官山UNIT ※ゲストあり。 際立ったポップ感と尖った感情表現を備えた楽曲、優れたプレイヤビリティに支えられたバンドサウンド。2024年の春以降、Awkmiuはさらなるステップアップを果たすことになりそうだ。 INTERVIEW & TEXT BY 森朋之
THE FIRST TIMES編集部