アマゾンが「ふるさと納税」に参入 翌日配送、時間指定で差別化狙う
インターネット通販大手アマゾンジャパンは19日、ふるさと納税の仲介事業を始めた。駆け込みの申し込みが増える年末にかけて市場は活気づくが、ふるさと納税のポータルサイト運営業者は既に20社を超える。後発での参入となったアマゾンは、どのような商機を見いだしているのか。 【写真】アマゾンのふるさと納税サイトから選べる返礼品の一例 「アマゾンにしかできない方法で、ふるさと納税を盛り上げ、地域貢献を目指す」。ジャスパー・チャン社長は「アマゾンふるさと納税」の開始に際し、こう意気込む。 アマゾンは、離島などもカバーする全国的な物流システムを誇る。商品の保管から梱包(こんぽう)、発送まで一括して代行するサービス「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」も強みで、自治体がFBAの配送網を利用すると、最短で翌日配送も可能だとしている。 当面、約1000自治体の返礼品計30万点の取り扱いを見込む。そのうち翌日配送の対象は数千点で、アマゾン限定の返礼品もあるという。国内取引先の多くを中小企業が占めるアマゾンにとって、ふるさと納税への参入は地場産品を広める好機でもある。 アマゾンは「普段の買い物で使い慣れたサイトから地域貢献できる」とアピールし、既存の販売サイトへの波及効果も狙う。 市場は活況だ。ふるさと納税による2023年度の寄付総額は約1兆1175億円に上り、4年連続で過去最高を更新した。近年は物価高も背景に利用が増えており、食品や日用品の人気が高くなっている。 寄付金額に対して返礼品は3割以下、仲介サイトへの掲載手数料や送料なども含めた経費は5割以下と地方税法などで規定されており、総務省の23年度調査では、寄付総額の48・6%を事務経費が占めた。これが自治体と寄付者をつなぐ仲介サイト運営事業者にとっての「うまみ」だ。 仲介サイト市場は現在、ふるさとチョイス▽ふるなび▽楽天ふるさと納税▽さとふる――など20社超がひしめく。後発のアマゾンは、その知名度に加え、既存の配送網を生かした翌日配送や時間指定、管理が難しい冷凍品の取り扱いなどで差別化を図りたい考えだ。 アマゾンの採用を決めている石川県能登町の大森凡世町長は「スピード配送のノウハウに期待している」と話す。能登半島地震後に復興支援目的の寄付が増えたが、復旧業務のかたわら返礼品の配送が遅れていたためだ。アマゾンによると、同社で仲介する自治体の半数以上が、業務効率化やコスト削減を狙いFBAを利用する予定だという。 ただ、ふるさと納税は寄付によって得られる住民税などの優遇措置以上に返礼品目当てで利用が拡大しているとも指摘され、「実質無料のネット通販」ともやゆされる。アマゾンの参入でこうした傾向が加速する懸念もある。【藤渕志保】