Mrs. GREEN APPLE、藤井 風、ONE OK ROCK……キャリア最大規模のスタジアム公演に至る軌跡
2024年7月、Mrs. GREEN APPLEのスタジアムツアー『ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~』が開催された。7月6日、7日の会場となったノエビアスタジアム神戸、7月20日、21日の会場となった横浜スタジアムは、どちらも3万人以上のキャパシティを誇る大規模なステージであったが、全公演、瞬く間にソールドアウト。改めて、今の彼らが受ける支持の大きさ、背負う期待の大きさを実感する。なお、彼らは今回、国内のバンド史上最年少でのスタジアムツアー開催という記録を打ち立てた。まさに、“前人未到”だ。 【ライブ写真あり】ミセス、華々しい初のスタジアムツアー 今回のツアーは、ミセスがメジャーデビュー以前より開催してきた自主企画シリーズ『ゼンジン未到』の最新版として位置づけられるものだった。今から10年前の2014年に同シリーズが始まった時の会場は、キャパ200人強のライブハウスである渋谷LUSH。その時は、メンバー自らチケットを手売りしたものの、結果として完売に至らなかった。その後、10年かけてバンドは大きな成長を果たし、これまでライブハウスを軸に開催してきた『ゼンジン未到』シリーズが、ついに今回、約15万人を動員するスタジアムツアーとして実現した。 〈未だ成されて無い事を/実らせて見せたいな/綺麗事がなんだかんだ好きな/僕らは希望を求めている〉。これは、今回のツアーで披露された初期曲「CONFLICT」の歌い出しの一節である。この楽曲は、2015年にリリースされた初の全国流通盤『Progressive』に収録されているもの。『日本レコード大賞』での大賞受賞、『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)出場などを経て、今や国民的バンドとなったミセスだが、この10年間の歩みは決して平坦なものではなかった。それでも彼らは、キャリア初期からこの曲の中で歌ってきたことを決して絵空事で終わらせないために、強い意志、深い覚悟をもって、前人未到の道を切り開き続けてきた。史上最年少でスタジアムツアー開催を実現した今の彼らがこの曲を披露すること、この言葉を歌うことに、非常に感慨深い気持ちになった人はきっと少なくなかったと思う。 筆者は、ミセスをキャリア初期から追い続けていて、また、近年は大規模な会場でミセスのライブを何度か観てきた。その中で思うのは、ライブの主戦場がアリーナやフェスのメインステージ、またスタジアムに変わったとしても、彼らの表現の本質は最初から変わっていないということだ。それこそ彼らは、2015年に『Progressive』をリリースした頃からすでにスタジアムなどの大規模な会場で鳴ることを見据えているかのような、壮大なスケールの楽曲を次々と生み出していた。 また、ミセスは、どれだけライブの会場が大きくなり、国民的な存在になったとしても、決して遠い存在になることなく、キャリア初期から一貫して一人ひとりの“あなた”のために歌を届け続けているバンドである。今回のツアーのダブルアンコールで披露された初期曲「我逢人」には、〈貴方はその傷を/癒してくれる人といつか出会って/貴方の優しさで/救われるような世界で在ってほしいな〉〈笑顔であってほしいな〉という言葉があり、こうした一人ひとりの“あなた”へ向けた渾身のメッセージは、「ケセラセラ」をはじめとした近年リリースされた楽曲にも通じるものだ。 キャパ200人台規模のライブハウスから、今回のスタジアムツアーへ。この10年間の歩みは全て一つに繋がっている。そして、変わらないまま変わり続けるミセスは、これからも新しいチャレンジを重ね続けていく。次の挑戦は、10月、8日間にわたって開催されるKアリーナ横浜での定期公演『Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”』だ。さらなる前人未到を目指すミセスの旅は、ここからまた新章へと突入していくのだと思う。 また、8月24日、25日には、藤井 風のスタジアムライブ『Fujii Kaze Stadium Live “Feelin' Good”』が日産スタジアムにて開催される予定だ。このライブは、藤井 風にとって自身最大規模の公演となる。彼が日本国内でライブを行うのは今回が約1年半ぶりであるため、この日を心待ちにしている人はとても多いと思うし、筆者もその一人だ。2023年2月、全国アリーナツアー『Fujii Kaze “LOVE ALL ARENA TOUR”』を完遂した彼は、その後、同年6月からアジアツアー『Fujii Kaze and the piano Asia Tour』に繰り出し、今年5月から6月にかけて『Fujii Kaze and the piano U.S. Tour』としてロサンゼルスとニューヨークで計4公演を行った。世界各国のリスナーとのコミュニケーションを重ねてきた彼が、今回のスタジアム公演でどのような姿を見せてくれるのか。期待して待ちたい。 また、前回の国内ツアー以降、「花」「満ちてゆく」をはじめとした新たな代表曲が次々と生まれているので、そうした楽曲たちがライブのステージでどのような輝きを放つのかも注目したい。