カスハラどうすれば?企業独自の対策進む 福井県内のショッピングモールや温浴施設…専門家も助言
顧客や取引先からの理不尽な要求「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策に乗り出す福井県内企業が増えている。国が企業にカスハラ対策の義務化を目指す中、専門家は「難しく考えず、自社なりのカスハラの基準を設ける必要がある」と指摘する。 ■安心感を提供 民間調査会社の帝国データバンク、東京商工リサーチが今年実施した全国調査によると、直近1年にカスハラ被害があったとする企業は帝国で15・7%、東京商工で19・1%。ともに個人客と接することが多い宿泊、小売り、サービス、金融で被害が多くみられた。 福井市のショッピングセンターエルパは、半年かけてカスハラ対策の行動指針をまとめ、10月から店内に掲示している。30分程度を目安にした長時間電話や居座り、対応者の揚げ足取り、頻繁なクレームなど、何がカスハラに当たるかを具体的に例示。対応手段として店舗から警備員、事務局へ連絡すること、事務局から警察へ連絡し、解決しない場合は法的措置を検討することも明記した。 エルパ運営の協同組合福井ショッピングモールの竹内邦夫理事長は「顧客対応は各店舗で行うのが基本で、今のところ重大なカスハラがあったとは聞いていない」としつつ、「緊急を要する場合の対応手順を定め、事務局が関与するという安心感を従業員に与えたい」と指針策定の狙いを説明。また「安心して働いてもらうことが、接客の向上にもつながる」とメリットを語った。 ■「目に見えて減少」 カスハラによりうつ病などの精神障害を発症するケースがみられる中、厚生労働省は22年に対策マニュアルを公表。顧客らの言動の要求が社会通念上相当な範囲を超え、労働者の就業環境が害されるものをカスハラと定義した。16日には、全ての企業に対しカスハラから従業員を保護する対策を義務付ける方針を示し、来年の通常国会で関連法案提出を目指す。 温浴施設運営のイワシタ商事(福井市)、イワシタ物産(同)は9月に指針を公表。年間数十件、ロッカーの鍵を投げつける、カウンターをたたきながら怒鳴るなどの被害に悩まされてきたが、担当者は「施設内に指針を掲示してからは3分の1くらいになり、目に見えて減った。従業員の負担緩和につながっている」と効果を実感する。 ■難しく考えずに コンビニなど運営の大津屋(福井市)は、従業員の名札着用や電話口での個人名の名乗りを一部で省略。従業員保護の必要性を認識する一方で、客が萎縮して正当な意見も聞けなくなる可能性も懸念している。担当者は「初期対応の結果でカスハラに発展したケースも多いかもしれない。初期対応の重要度を従業員にどう理解してもらうかは悩ましい」と語る。別の県内企業の担当者も「カスハラはグレーゾーンが広く、線引きは難しい」と明かす。 カスハラ対応研修を全国で開くカスハラアドバイザーの山田泰造氏(東京)は、自社なりの基準の作成は大事とし「難しく考えず、過去に受けた悪質なクレームや業界他社での被害、社会的に問題視されている行為を書き出すところから始めるのがいい」とアドバイスしている。