「PFP1位を狙うなら井上尚弥を倒すしか…」26歳中谷潤人“完璧なKO”に冷静な英国人記者も絶句「(中谷が)負ける姿は想像できない」
PFP1位になるためには…
現在、中谷は私がランキング選定委員を務めるリングマガジンのPFPランキングでも9位に入っています。ぺッチ相手の一方的なKO勝ちの後でも、中谷の順位は上がらないでしょう。 当然ですが、PFPはエリートレベルの選手がひしめき合っており、さらにランクを上げようと思えば優れた対戦相手が必要です。中谷がトップに食い込もうと思えば、アルツール・ベテルビエフがドミトリー・ビボルに競り勝ったように評価の高い相手への勝利や、オレクサンドル・ウシクがタイソン・フューリーを撃破したような重要な勝利が求められてくるのでしょう。 もちろん、周辺階級で高く評価される井上尚弥を破るのが理想的。ただ、その前に、尚弥の実弟であり、同じバンタム級の王者である井上拓真はさまざまな意味で適当な対戦相手に思えました。ここで拓真が堤聖也に敗れたことで、来春に噂された統一戦が流れたのは残念ではあります。 中谷は統一戦希望を明言しており、拓真戦がなくなった後でも、すべて日本人選手である他の王者たちのいずれかと戦えればそれがベストなのでしょう。 武居由樹、西田凌佑、堤という対抗王者の中でも、拓真を撃破した堤は鮮烈な印象を残しました。試合前、私は拓真の判定防衛を予想していましたが、堤は精力的に攻めることでアウトボクシングが得意な王者を打撃戦に巻き込んだのです。 打ち合いに応じたのは拓真側の意図でもあったのかは分かりませんが、そうだとしたら間違ったプランだったと思います。ともあれ、ハードパンチを数多く出せる堤は、拓真とのハイレベルの戦いの中で、最後まで攻め抜くことで次第にファンを味方につけていったような印象もありました。
英国人記者を驚かせた堤のスタミナ
あれほどのペースで手を出し続けたのは驚異としか言いようがありません。試合中盤ごろ、私は知人と「このまま最後まで攻め切れるわけがない」といった話をしていたほど。 日本のプレッシャーファイターたちのスタミナは本当に見事です。堤の長所は積極的な姿勢、手数の多さ、意志の強さ。そんな新王者が中谷との統一戦に向かえば、中谷対拓真ほどの分かり易いストーリーラインはないとしても、特に日本では多くのファンに支持されるビッグファイトになるのでしょう。 しかし、堤の陣営がすぐに統一戦を望むかはわかりません。 拓真戦での堤があれほど攻め抜けた背景として、拓真が強打者ではないという点が大きかったと思います。中谷相手に同じように攻めれば、少しでもミスを犯した時、激しく痛めつけられます。 このマッチアップは中谷が断然優位。堤の強打を浴び、その打たれ強さが実は一定以上ではなかったと示されるような展開以外、中谷が負ける姿は想像できません。だとすれば、ついに世界王座に辿り着いた後で、不利の予想が出されるはずの中谷戦にいきなり向かうより、堤側が何度か防衛戦をこなしたいと考えるのは当然ではあります。 とはいえ、私は中谷には大きな期待を寄せており、なるべく早い段階で統一戦のリングに立つ姿が見たいという希望は変わっていません。そして、理想を言えば、2025年の半ばから年末までに1階級上げ、井上尚弥との決戦を実現させて欲しいですね。 中谷の身体を見る限り、スーパーバンタム級への転向が難しいとは思えません。昇級直後であっても、サイズ面では井上尚弥相手でも不利にならないでしょう。だとすれば、やはりこの試合こそがスーパーファイト。これから先、バンタム、スーパーバンタム級がどう動いていくかはわかりませんが、軽量級史上に残る一戦が来年中に成立に向かっていくことを私自身も心から願っています。 (後編につづく)
(「ボクシングPRESS」杉浦大介 = 文)
【関連記事】
- 【続きを読む/後編】「配信があって幸せだ」英国人記者は“異例の7大世界戦+那須川天心”をどう見た?「中谷、堤は見事だったが私の目を引いのは…」
- 【衝撃写真】「強すぎるでしょ…」中谷潤人のエグい左が顔面をとらえた決定的瞬間「あ、アコが砕けそう…」肩車されるカワイイ拳四朗、血だらけでも映える天心、堤vs拓真“アツすぎる激闘”など異例の2日間興行を全部見る(全100枚超)
- 【訃報】全米でも速報された23歳日本人ボクサーの訃報…穴口一輝の激闘から何を学ぶべきか「ボクシングには罪の意識を覚える試合が存在する」
- 【話題】「俺のこと恨んでいると思っていた」赤井英和を病院送りにした“噛ませ犬”大和田正春はいま…「“浪速のロッキー”の脳が揺れた鮮烈の左フック」
- 【注目】“格下の高校生”だった井上尚弥に敗北「試合後、初めて泣きました」後の世界王者たちを撃破“アマ最強ボクサー”は高校教師に…柏崎刀翔の壮絶人生