伝説のモデル山口小夜子の言葉「日本人はヘアスタイルについてまわりに影響されすぎている」
モデルデビューをした翌年の1972年にパリ・コレクションデビュー。以降1シーズンで十数件のショーをかけもちするなど、トップモデルとして活躍した山口小夜子さん。ニューズウィークで「世界のトップモデル6人」に取り上げられたこともある伝説のスーパーモデルだ。 【写真】マツコ・デラックスが「美の化身」と絶賛した山口小夜子さんの姿を連続写真で モデル・俳優の冨永愛さんは、「最も尊敬する存在」と公言し、マツコ・デラックスさんは「美の化身」と絶賛する彼女は、2007年病気のため急逝した。亡くなって15年以上が経つが、いまも多くの人の憧れの存在だ。東京都現代美術館の「山口小夜子 未来を着る人」展覧会(2015年)には5万6000人もの人が来場、2024年7月2日から7日まはで表参道のスパイラルビルにて「山口小夜子『この三日月の夜に』展」が開催されている。 そんな山口小夜子さんは、生前に多くの印象に残る言葉を残していた。そこには時代の先を見据えた、冷静ながら優しさに溢れた山口さんの生き方が溢れている。生前のインタビューを厳選し、まとめた著書『この三日月の夜に』から、独自の人生観を語った言葉を抜粋して紹介する。 前編「冨永愛が「最も尊敬する存在」と語る山口小夜子の「決めつけない」生き方」では「年齢や体形がいろいろあるモデルも出てくる」と1980年代に語っていた山口さんの生き方が伝わる言葉をお届けした。後編の言葉からは、世界をまたにかけて活躍した山口さんが持っていた、人としての優しさが伝わってくる。
おしゃれというものは、秘密作戦なの
おしゃれというものは、「ひそかに」ということから始まるものだとおもう。それは、自分がどのように自分になるのかという秘密作戦なの。それがうまくいくと、自分の体験からも世の中の関係からも、自由になれるような気がしてくる。文学や音楽と同じではないかしら。 (写真集「小夜子」 1984年9月23日) 頑固におかっぱにこだわっているわけではありませんが、自分のおでこが好きじゃないし、眉毛をどうしていいかわからないというのも理由のひとつなのです。おでこを出すと、裸でいるような恥ずかしいような、落ち着かない気分になるのです。おかっぱスタイルはもう私の顔の一部になっていて、いちばん安心できるものなのです。それに外国で仕事をしていると、外国人にとって東洋人の直毛は憧れの的なのだということをつくづく感じます。 (「小夜子の魅力学」 1983年3月13日) 私が誰かのファッションのアドバイスをしなければならないとしたら、まず第一に、その人の髪を変えることから始めると思う。男の人が相手なら、ほとんど髪を切る。日本人はヘアスタイルについて、まわりに影響されすぎている。 ファッションは文明の本質から生まれてくるものだと考えたい。民族性にとらわれることはないけれど、少なくとも「まわりからどう思われているか」などという観点だけで決めることはない。 想像もつかないことをやろうとするよりも、まず「見方を変える」ということに挑むことから始めたいの。世の中で見えている見方は、まだまだ最終的なものではないはずだとおもいたい。 (写真集「小夜子」 1984年9月23日)