1軍昇格を待つ球界のレジェンド 山本昌の巧の技
「まだまだ腕が振れていない」
それでも山本昌は2軍での結果には満足など何もなかった。甲子園の通路に出てきた山本昌は足速にバスへと急ぎ多くを語らず浮かない顔。「喋ることは何もないですよ。下で良かったと言ってもねえ。ボールの回転はブルペンで投げ込んでいる状態くらいには戻っていて、これまでよりは良くなっているけれど、もっと腕も振れないと。まだまだでしょう」 すでに臨戦態勢はできているように見えたが、山本昌には、まだひっかかるものが残っているようだ。4本のヒットは、いずれも甘いコース。万全を期すなら、もっと高い精度と、それを打ち損じにつなげるボールのキレを求めたい。 そうは言っても、これだけの安定した『巧の技』を見せられると、報告を受けた谷繁兼任監督は黙ってはいられないのかもしれない。先発の5人目、6人目が、どうしても弱い。阪神、ヤクルトの6連戦は、山井、川上、岡田、大野、カブレラ、朝倉でローテーが組まれているが、ゴールデンウイーク明けには、9連戦も待っていて、もし朝倉らに結果が出なければ山本昌の緊急昇格があってもおかしくない。結果を残せば残すほど、自身が持つ最年長記録を更新していく球界のレジェンドが、遅まきながら、1軍マウンドに帰ってくる日は、そう遠くない。