笑いで“生きる力”届けたい…「土佐の寅さん」過疎地を行く 公務員から「芸人」に!間六口さん全国制覇達成へ
過疎地に笑いを届ける“使命”
別の日、間さんは高知県黒潮町・熊野浦地区を訪れた。人口42人、7割が65歳以上の集落だ。ここには、間さんを心待ちにしていたという渡辺信子さん(80)がいる。渡辺さんは今年(2024年)3月に脳卒中を起こし、大きな手術を経験。体調に不安が残るものの「間さんに元気をもらえる」と今回の世話役を引き受けた。間さんの講演を見るのは3年連続だ。 熊野浦のような過疎地では、祭りなどの行事が無くなり、人が集い笑い合う場が少なくなっている。間さんの講演について、渡辺さんは「間さんが(前回の講演で)言うたことを、みんなが覚えちゅうき、それを言うては(思い出して)笑いよう」と地区の人たちが笑いあうきっかけになっていると語る。間さんも「珍しいんですけどね、3年も呼んでいただくの。多分、だいぶ気に入ってくれてるのかな」と手応えを感じている。 間さんが過疎地に笑いを届けることにこだわってきたのは、活動当初に言われた言葉が心に刻まれているからだ。 間六口さん: 「間さん私、今年何にもいいことがなくて、辛いことばっかりで笑うこともなかった。今年も終わるのかなと思ったら、最後の最後、一年分笑わせていただきました。ありがとう」と言われた。生(なま)の笑いを届けることをずっと続けたいなと思うきっかけになりました。 今回の講演では、老いを吹き飛ばす「健康爆笑トーク」を披露した。 間六口さん: 古希過ぎますと体にもいろいろ変調が出てまいりまして。最初は耳がちょっと聞こえが遠くなったのかなと思って、予約もなしに県立の病院行きましたら、まあお母さん、待たされました。待って待って待って3時間以上待って、診察結果は“年並みです”と。 誰もが体験する”高齢者あるある”に熊野浦の人たちも大笑い。また、ここでも「バナナの叩き売り」で間節が炸裂します。 間六口さん: 今日お越しの方で最長寿の方に差し上げたいと思いますが、“鎌倉時代に生まれたって方?” 病気でふさぎこんでいた渡辺さんも、爆笑トークに満面の笑顔となった。 間さんは最後に「スリッパを脱ぎっぱなしの夫に妻が怒っている」という漫談を披露した。 間六口さん: 先日も、スリッパがないと思って探してましたら、めざとく家内が見つけてね。『もうだきな(だらしない)、あんだけ言ってるのに、しょうこりもない。今度こそ脱ぐとこ決めとってよ』って烈火のごとく起こる家内の足元見ましたら“私のスリッパを履いてました”。 大笑いする熊野浦の人たちに間さんは、7年前の講演会の思い出を語った。最愛の夫を亡くしてふさいでいた84歳の女性が、この漫談で3カ月ぶりに笑い「生きる力をもらった」と間さんに告げたのだという。 間六口さん: 笑いっていうのは、苦しみとか悲しみを瞬時にリセットしてくれる、そういう効果を持っている。だから、いろんな辛いこともあるかもわかりませんが、笑っていると明るい顔には人が寄ってきてくれる。ぜひ皆さんもこれからも元気で、笑って過ごしていただきたいと思います。 講演の後、86歳の男性は「どういてお礼の言葉を述べたらえいろうかと思うばあ、面白うて、長生きするわ」と笑顔で語った。世話役を引き受けた渡辺信子さんも「良かったちや、私のために来てくれたみたいな気持ちになってしもうた。みんなで笑えることができたのは本当に感謝してます。今日はありがとうございました」と胸がいっぱいの様子だった。