放送ギリギリのアニメ『スナックバス江』でチーママを演じた高橋李依が、実際のスナックに行ってびっくりした2つのこと
初スナック体験で驚いたこと
――身を削ってますね(笑)。高橋さんご自身はスナックに行かれた経験はありますか。 この作品に触れる前までは行ったことがなかったんですけど、作品が決まったあと、アニメ化にあたって参考となったスナックに遊びに行かせていただいたんです。空気感や、お店のシステム、働いているママたちの動きを間近で感じさせていただきました。 ――初スナックはどうでしたか。 まず、そのスナックのママの歌が本当にうまくてびっくりしました。ビブラートもすごくきれいで。自分は職業柄、歌声を聴くことも多いのですが、スナックで人を楽しませるプロの歌に触れられたこともすごくよかったです。 心地よくて、優しくて、柔らかくて。息の使い方もなんだかお姉さんっぽくてセクシーで。そうした抑揚もすごく参考になりました。 ――スナックのママとの会話も楽しみましたか。 ママの年齢幅もたくさんだと思うんですけど、私が会ったママは、私にお姉さんがいたら……くらいの年齢の方で話しやすかったです。 ママは頼もしかったですね。私とは違う人生を歩んで、いろいろな方と出会ってきて。会話に長けたプロであるママに相談できて楽しかったです。同性としてもすごく素敵なんですよ。男友達には言えないようなことも、きっとママにだったら言えるし。そういう包容力がすごく心地よかったです。 同性同士だからこその悩みを聞いたり。あとはママのやばかった元カレの話も聞きました(笑)。元カレの借金を背負ってたという話はまさに明美ちゃんと同じで、実際にこういう人いるんだって、びっくりしました。
「バス江」では見せたくないところまで見せている
――その明美の役作りなんですが、難しかったのではないですか。 実は今回は役作りよりも「作風作り」のほうが難しかったです。明美ちゃんは発言自体に性格が詰まっているので、発言すればするほど性格が伝わると思っていて。発言すると、彼女がどんな人間だか隠せないともいうか(笑)。 ただ、キャラ達のいる「スナックバス江」という場所の空気感は、私たち声のキャストに委ねられたところも大きくて。原作を読んだときに抱いたハイテンションコメディかなと、私たちがバタバタと盛るようなお芝居をしてしまうと、スナックというよりパブになって、場末のスナックの空気感ではなくなってしまう。そこが難しくて......。 なので、他のキャストさんたちと協力しながら尺調整をしつつ、座って飲みながら話すスナックの温度感はどこなのかと探りながら見つけていきました。 ――会話劇ですし、ふだんよりも役者さん同士の掛け合いがより大事になってくるのですね。 もちろん「間」を使うこともあるんですけど、作品のほとんどがセリフ、人の会話で成り立っている作品なので。今回はみんなで同時にアフレコできたこともすごく大きかったです。 アフレコの裏話でいうと、お客さん役の役者さんは、出番がパートごとだったり、限定的じゃないですか。なのに出番が終わってからもなんだか残って、ずっとアフレコを聞いてくれているんですよ。帰ってもいいのに(笑)。 結局、誰かしらが後ろに座ってずっと聞いている感じで。会話自体は3人なんだけれど、常にみんなに会話が共有されているような、本当のスナックみたいな、和気あいあいと仲の良い現場でした。 ――お話を聞いていると、アフレコ現場の雰囲気のよさが伝わってきます。 本当にそうなんです。皆さん、マイクの前に立つとちゃんとプロとしてお仕事もするし、休憩時間になると「今日の差し入れ、おにぎりだって!」などと言って、ワーッて集まって食べたり。仲のいい現場だなと思います。もちろん、単純な仲良しこよしとかじゃなく、同僚感でもあるというか。 たまに、「バス江」で共演したキャストさんと他の現場で、相手はイケメン役、私も美少女を演じていると、お互い「なんか、ちょっとヘンな感じですね」ってなっちゃうことも(笑)。正直、お互い見せたくないところまで見せてしまったという、謎の固い絆があるかもしれないですね。 「もうあんなセリフを言い合えた俺らだもんな」みたいな(笑)。 取材・文/徳重龍徳 撮影/村上庄吾
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