「高嶺の花」ウナギの値段が下がる日は?
7月22日は「土用の丑」ですが、高騰するウナギの価格を受け、「ここ1~2年、蒲焼きなんて食べていないよ」という人も多いのではないでしょうか。水産庁が発表したシラスウナギ(養殖用の稚魚)の平均取引価格は、1キロあたり248万円と2年前の約3倍。10年前の2003年と比較すると、じつに15倍以上の価格になっています。平均取引価格をまとめたグラフの急激な上昇度を見ると、数年後にはウナギが庶民の口に入らなくなるのでは…という気すらしてきます。このままウナギは高嶺の花となってしまうのでしょうか?
なぜウナギの値段が下がらないのか
スーパーや飲食店でウナギの価格を見ると、もはや気軽に食べられる食品ではないことを実感します。吉野家の「うな丼」並盛りは昨年100円の値上げをしたばかりですが、今年はさらに30円値上げして680円です。現在280円の「牛丼」並盛りを2杯食べてもおつりがくる金額です。 なぜウナギの価格は下がらないのでしょうか。直接的な理由としては、ウナギの稚魚であるシラスウナギの不漁に尽きます。日本国内で流通しているウナギのうち、99%は養殖物。養殖なら簡単に増やすことができると思われがちですが、一般的なウナギの養殖では天然の稚魚が育った段階で捕獲し、親ウナギになるまで育てるという方法がとられています。養殖といえども、結局もとになるのは天然資源というわけです。
研究が進む完全養殖
天然資源に左右されずにウナギを安定供給する道として近年注目されているのが、卵から親ウナギになるまで育てる完全養殖です。ウナギの完全養殖は、意外なことに技術的にはもう実現しているといいます。しかし現状では卵からシラスウナギにまで成長する確率が低く、とても商業ベースに乗せられる段階ではありません。 ウナギの養殖に関しては古くから試行錯誤されており、国内では1960年代に研究がはじまりました。しかしウナギの生態を解き明かすのは一筋縄ではいかず、産卵場所や幼生の餌など養殖のカギを握るポイントは長年謎に包まれたままでした。しかし昨年、東京大学と海洋研究開発機構の研究によって、ウナギの幼生がマリンスノーと呼ばれるプランクトンの死骸を食べていることが明らかになったのです。これにより、ウナギの幼生に本来食べているものに近い成分の人工餌を与えることが可能になり、効率よく養殖する道が開けてきました。 水産庁は昨年、5年後をメドとして完全養殖でシラスウナギを年間1万匹つくる技術を確立する方針を明らかにしています。ただ1万匹といっても、ウナギの需要における割合としては、ほんの一握り。ウナギを以前のような価格で食べられるようにするにはまだまだ時間が必要ですが、研究は確実に進んでおり、いずれ商業ベースに乗る日がくるでしょう。 (Sherpa/編集プロダクション)