「ミツバチの仁王さん」奈良・當麻寺の金剛力士像 修理で威容再び
文化財の宝庫・奈良に、「ミツバチの仁王さん」で知られる仏像がある。古刹(こさつ)・當麻(たいま)寺(葛城市)の金剛力士像。ミツバチが巣をつくるなどして損傷していたが、修理で力強い姿がよみがえった。なら歴史芸術文化村(奈良県天理市杣之内町)で展示している。 【写真】修理を終えた仁王像=2024年4月6日、奈良県天理市のなら歴史芸術文化村、清水謙司撮影 金剛力士像(仁王像)は、阿形(あぎょう)と吽形(うんぎょう)と呼ばれる2体があり、江戸時代の木造で像高は約3・4メートル。うち、口の開いた阿形像に約30年前からミツバチが入り、頭部に巣をつくった。ハチミツやミツロウが体にしみ込み、頭部や体部は次第に汚れていったという。経年劣化も進み、解体修理が決まった。 2022年から文化村の修復工房で修理が始まり、2年がかりで完成。それを記念して、寺の仁王門に戻る前に実物を展示することになった。 黒ずんで見えた顔や汚損が進んでいた玉眼もきれいに。ミツバチが入り込んでいた口は、内側に当て木を取り付けて、中は完全にふさがれた。 解体修理作業は、像だけではなく、そこをすみかにしていたミツバチ(ニホンミツバチ)も守ったのが特徴だ。展示ではその「引っ越し」やその後についても丁寧に紹介している。 像の頭部を取り外したときに、女王バチを救い出して用意した巣箱に。そこに他のミツバチが移るのを待った。巣箱は後に、春日山原始林の山すそに移されたという。 阿形像の次は吽形像の修理も始まる。口を閉じていてミツバチが入り込むことはなかったが、やはり経年劣化しているからだ。 文化村の鏡山智子主任学芸員は、「今回はミツバチが注目を集めたが、文化財の修理は多くの人が関わる地道な作業。個々にストーリーがある」と言う。 阿形像展示は5月12日まで。観覧無料。月曜日休館(祝日の場合は翌平日)。(清水謙司)
朝日新聞社