残業代なし、時間外労働は“自主的な活動”…学校教員苦しめる「給特法」改廃求め弁護士らが集会
月155時間の時間外勤務でも「命じていない」責任逃れ
自らも長時間労働で適応障害を発症した西本武史氏(大阪府立高校教諭)は、給特法について「時間外勤務を命じてはいけない“良い法律”であるという意見もたまに聞くが、全く現場を理解していない、あるいは現場を無視している考えだ」と言い切る。 西本氏は、適応障害を発症したのは長時間労働を余儀なくされたことが原因だとして大阪府に損害賠償を求める裁判を起こし、2022年6月に勝訴している。その裁判の経験から「いざとなったら使用者は、全面的に給特法を盾に取ってくる」と指摘し、次のように述べた。 「適応障害を発症する前、多い月で155時間に上る時間外勤務があった。当時の担当業務は、担任、授業、生徒指導、ラグビー部の顧問。それから国際交流委員会の委員長として夏休みには2週間オーストラリアへの引率と、その準備などに携わっていた。担任や部活動の顧問だけでも、今の学校現場では長時間労働になってしまう。それでも裁判では、『時間外労働は命じてない。西本さんが自主的・自発的にやっていた』と主張された。給特法の廃止は(教員の長時間労働を是正する)最低限のスタートラインだ」(西本氏)
「給特法が存続する限り長時間労働に歯止めがかからない」
東京大学の本田由紀教授(教育社会学)は、日本の公立校教員は世界一の長時間労働を強いられているとして、国に方針の転換を求めた。 「日本の1学級あたりの児童生徒数は先進諸国でも最多レベルだ。労働時間は最長、学級サイズも最大。公費(残業代)もつけずに、多すぎる仕事量は際限なく教員に押し付けられ、異常なほどの長時間労働を生んでいる。給特法が存続している限り、教員の仕事内容や勤務時間が無限に膨れ上がることに一切歯止めがかからない。 まずは給特法の廃止を。そして、残業代などを払うことにして、一体どれぐらいの時間外労働を教員が強いられているかをきちんと金額として算出し、可視化する必要がある。そうなれば、教育指導要領の内容や児童生徒の評価方法、そして教員1人あたりが持つ授業時間数・生徒数を削減していくといった実質的な対策に踏み込むことが可能になるはずだ」 その上で、「自立して社会的な発言力、責任を持ち、子どもたちの重要なロールモデルとなる教員が、長時間労働・過重労働に耐えていることは、子どもたちにも悪影響を与えている可能性がある」と指摘し、教員らに対しても現場から声を上げていくことの重要性を訴えた。
弁護士JP編集部