色や味…進化続けるミニトマト 20年で生産面積6割増
トマトのトレンドは、小玉が存在感を高めている。ミニトマトの作付面積は20年間で6割増えた。包丁を使わず洗うだけで食べられる簡便性が、消費者の支持をつかむ。スーパーの売り場には高糖度、カラフルといった特徴ある商品がひしめく。独自色を出す産地の戦略が人気を後押しする。 【グラフ】ミニトマトの作付面積 大玉が大部分を占めていたトマトの消費は、20年で様変わりした。食品スーパー・東急ストアのトマト販売の内訳を見ると、20年前は「大玉60%、ミニ25%」という比率だった。それが現在では「ミニ45%、大玉36%」と逆転したという。 店頭には、高糖度、カラフル、房付きなどミニトマトの豊富な品が並び、200グラムレギュラー品に100グラムの少量品までそろう。 山岡邦彦青果バイヤーは「健康志向、使い勝手の良さといったニーズに合致した。高糖度アイテムが多く色別の味の違いも楽しめ、果実感覚で味わう消費者も多い」と人気の理由を話す。
量から質に転換
堅調な消費を背景に、ミニトマトは増産が進む。農水省によると、2022年のトマト全体の作付面積は1万1200ヘクタールと、20年で15%減った。一方でミニは22年に2690ヘクタールと、同63%増加。トマト全体に占める割合は24%と11ポイント上昇した。 トレンドの変化について、東京の青果卸は「10年余り前に健康効果が注目され、トマト全体の需要が一気に伸びた」と振り返る。ブームを背景に増産意欲も高まったが、「大玉は勢いに陰りが出て、相場が苦戦する局面も増えた」(同)。 ミニトマトへのシフトが進むが、「将来、大玉同様に頭打ちとなる」との見方もある。単純に量を増やすのではなく「質」での勝負になっている。
「独自色」で勝負
産地はトレンドを冷静に見極め、独自色を出す戦略を立てる。愛知県のJA豊橋は、へたがなく肉厚で棚持ちも良いブランド「クレアシリーズ」を生産。黄、赤、オレンジ、緑の4色をそろえる。 独自色を出すため重視するのが食味だ。JA営農販売課の伊藤修平係長は、「彩りや扱いやすさなどの売りも大事だが、良食味であることが大前提。食味がついてこないと市場評価を下げてしまう」と強調。指標の一つである糖度を安定できるよう、栽培は全量、土耕と比べて自然環境に左右されにくい養液栽培にする。10~7月の出荷期間中、糖度は安定して8を上回り、2~4月は10前後を確保する。 JAミニトマト部会副部会長の伊藤浩治さん(53)も「栽培方法を統一し、高位平準化した商品を安定供給できるかが鍵だ」と同調する。 多様なニーズに応えるアイテムをそろえ、おいしさを保証することでミニトマトの堅調な需要を支える。(橋本陽平)
日本農業新聞