DeNA、日本一の要因は『シンID野球』…ヤクルト野村克也監督が提唱した『データ野球』をIT化で進化
◇記者コラム「Free Talking」 ベイスターズの1998年以来、26年ぶりの日本一にDeNA担当として立ち会えた。三浦大輔監督がハマの夜空に舞った翌日も本拠地の周辺で牧や東の写真を前に記念撮影する姿が目立った。横浜の街は一夜明けても熱気を帯びていた。 ◆南場オーナー、三浦大輔監督から歓喜の「ビールシャワー」【写真】 チームを頂点に導いた要因の一つは間違いなくデータ分析だ。3位に終わったレギュラーシーズンも、データで相手との相性をはかり、投手のやりくりを決め、打順やスタメン起用に反映してきた。そして、今回の日本シリーズでも交流戦以外で戦わないソフトバンクのデータを解析した。 まずはパ・リーグの打者をDeNAの打者に当てはめた。同じタイプや打順の打者をどう攻めていたのかを、個々に配られているタブレットの画像で配布。配球の参考にした。「若い選手は一度教えると、どんどん自分で見るんです」と関係者。熱心に動画を見る姿が目立ったという。 MVPを獲得した桑原は31歳。若い人ほど端末は使わず「考え過ぎると打てない」と分析はあまりしない。本能で勝負するタイプの選手ではあるが、アナリストが桑原用に分析して単純化したデータを伝えると、熱心に聞いてくれたという。 打線全体への傾向もつかんだ。相手の先発投手の攻め方が何パターンあるかを分析し、「今日はスライダーが軸のAパターン」など序盤のうちに判断。予測した配球パターンのどれかに当てはめ、攻略の糸口を探した。さらに、リーグ戦をデータ面で反省。終盤での内野のミスや外野の補殺が少ないことを洗い出し、守備固めの起用につなげた。 データを重視する野球はヤクルト時代の野村克也監督が提唱した。ID野球の「ID」はインポータント・データ。データ重視野球の神髄はスコアラーが手書きした数値の中から、単純化した情報を見つけて選手に伝えることだったとヤクルト担当時代に聞いた。 DeNAは、IT化でそれを進化させた。日本一の要因は「シンID野球」。データを分析して伝えたアナリスト、コーチ、活用した選手全員の勝利。拍手を送りたい。(DeNA担当・後藤慎一)
中日スポーツ