【エリザベス女王杯回顧】スタニングローズが2年ぶり復活V 改めて証明した“薔薇一族”の活力
きっかけをつかんだラヴェル
2着ラヴェルはキャリア2戦目のアルテミスSでリバティアイランドに勝ち、重賞初制覇。順風満帆かと思われたが、そこから突如、長いトンネルに入った。こちらも牝馬特有のスランプにもがいた一頭だったといえる。 先行しても差しても好走できず、そこそこ脚を使えても、決め手を欠くという現状が続いた。母サンブルエミューズだから、スタニングローズと同厩舎でライバルでもあるナミュールの妹。スタニングローズ復活勝利の2着がラヴェルだったのは不思議な縁を感じる。 ラヴェルの復活のきっかけをつくったのは、リバティアイランドの主戦・川田将雅騎手。矢作芳人厩舎とのコンビといえば、ラヴズオンリーユーがいる。 今年の川田騎手×矢作厩舎は6鞍【3-3-0-0】で連対率100%。とっておきの騎手起用だった。戦前に気がついていればと後悔しかない。2022年以降はコンビ結成数が減ったものの、年間7~8鞍はあるので、次の機会に役立てよう。 3着ホールネスは1、2着とは対照的に7戦【4-1-2-0】と崩れない。新潟牝馬Sから中2週の強行軍でも好走できたのは本物の証だろう。 デビューから約1年半で38kgも馬体重が増え、成長が止まらない。体重について触れるのは牝馬に失礼だが、底知れないスケールを感じる一頭だ。レース振りも自在で、今回は最内枠からスタニングローズの背後をうまく追い上げた。スパートで離されたのは課題だが、反応がよくなれば、大舞台での勝利もある。 1番人気レガレイラは5着。ローズSまで課題だったゲートと後ろすぎる位置取りはいくらか改善されたものの、上がり勝負で中団後ろでは厳しかった。直線も進路がなく、強引になる場面もあり、能力全開とはいかなかった。牝馬特有のスランプに陥っている可能性は否定できない。まずは立て直しだろう。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳