「ジオンが勝つ未来はあった?」初代ガンダム「一年戦争」におけるターニングポイントを考察
■大勝した「ルウム戦役」、そして幻となった休戦条約
ジャブロー基地の破壊に失敗したジオン軍は、再度コロニー落としを実行すべくサイド5のコロニーを狙って進軍する。 この動きを知った地球連邦軍のレビル将軍率いる連邦艦隊は、阻止するために進軍。1月15日に両軍はルウム宙域で激突した。これが「ルウム戦役」と呼ばれる戦いである。 ジオン軍は戦力比的には劣っていたが、ジオン側がモビルスーツを投入したことにより状況は一変する。モビルスーツ「ザク」の活躍と、ミノフスキー粒子による有視界戦闘に苦戦した連邦サイドは、艦艇の約80%を喪失するという大敗を喫した。 さらに被弾した旗艦から脱出を図ったレビル将軍が、ジオンの「黒い三連星」によって捕獲されてしまう。連邦屈指の名将がジオンの捕虜となり、想像もしない大敗を喫した地球連邦サイドには厭戦ムードが漂い、早期講和の声が高まることになる。 1月31日、中立であるサイド6を仲介役にして、南極において休戦交渉の席が設けられた。勢いに乗るジオン側が連邦に突きつけた条件は、事実上の降伏勧告である。弱腰の地球連邦政府が条件受け入れに傾くなかで、レビル将軍の奪還が伝えられたのである。 捕虜だったレビルを奪還したのは連邦の特殊部隊だが、その裏では戦争を継続したいジオン側の思惑も蠢いていた。 救出されたレビル将軍は全地球圏に向けてジオン軍の疲弊を伝え、「ジオンに兵なし」いう名演説を行い、徹底抗戦を訴える。その結果、休戦協定ではなく核の使用やコロニー落としなどを禁じる南極条約が締結され、戦争はますます泥沼化していくのである。 もしもレビル将軍の奪還が失敗、いや、あと数日でも遅れていたら、ジオン側の事実上の勝利で戦争は終わっていた可能性は大いにある。
■地球からの撤退を余儀なくされたオデッサでの敗北
ジオン軍は地球への直接侵攻を開始し、ジャブロー攻略のために北欧や北米など、さまざまな地域を支配していく。しかし、地球連邦軍の抵抗も激しく、モビルスーツの特性である機動性も重力下ではあまり活かせず、戦線は膠着した。 そうこうしているうちに、地球連邦もモビルスーツの実用化に成功。それがテレビアニメの第1話へとつながる。 そして11月には地球連邦軍の大規模反攻作戦「オデッサ作戦」が発令。欧州屈指の工業地帯や鉱山地帯のあるオデッサは地球連邦軍に奪還され、その後、地球にいるジオン軍は敗戦を重ねることとなる。11月30日には、悲願だったジャブロー侵攻を開始するも失敗に終わり、戦いの舞台は宇宙へと移った。 だがモビルスーツの大量生産を実現した地球連邦軍にジオン軍は劣勢に立たされ、一年戦争は終戦へと向かっていったのである。 地球での戦線膠着は連邦サイドに時間を与えることになり、その結果モビルスーツなどの量産を許す事態となった。そのうえジオンはオデッサ作戦で敗れたために地球侵攻の足掛かりを失い、貴重な資源の供給地まで手放したのだから状況は相当厳しかったはずだ。 結果的にオデッサの敗戦が、一年戦争の勝敗を左右する大きな契機になったとも考えられないだろうか。 『機動戦士ガンダム』で描かれた一年戦争のターニングポイントを振り返りながら、ジオン公国が勝利する可能性を探ってみた。やはり双方の国力差を考えると、ジオン公国は開戦1か月ほどが勝負の鍵を握っていたと思われ、ルウムでの圧勝後に早期講和がまとまらなかった以上、勝ち目はほとんどなかったのかもしれない。 ガンダム好きの皆さんは、一年戦争のターニングポイントはどこにあったと思うだろうか。
クロハチ