患者の電力関連データを使い診療充実めざす 中部電力と慶応大病院
電気の使用量を計測するだけでなく通信機能も備えた「電力スマートメーター」。中部電力は31日、慶應義塾大学病院と共同で、このメーターからのデータをクラウド経由で医師に提供し、患者の診療に役立てる研究に取り組むと発表した。 約3年間のスケジュールで、東京都内にある同病院に通う患者100人程度を対象に始めるという。
電力使用量などのデータを病院へ
社会課題の解決を目指す新規事業の一環。ヘルスケア分野での事業化を探っていたが、国の進める「AI(人工知能)ホスピタル」のシステム開発に参加している慶応大病院と手を結んだ。 患者の自宅に設置されている電力スマートメーターからの電力使用量、環境センサーによる室内温度や湿度、ベッドなどに取り付けたセンサーで得られる睡眠時の心拍数といったデータを、中継装置を通じて「中電クラウド」に蓄積。そのデータや、データ分析によるレポートを医師が活用するというしくみ。 これまでのような患者の自己申告ではなく、日々のデータに基づいた正確な診断や生活指導ができるようになる。一方、患者側は医師の指導の下、病気に応じた生活環境の改善ができる。
データは「最高レベルのセキュリティー」で管理
また、慶応大発のベンチャー企業「メディカルデータカード」社とも2020年度中に提携予定。患者がスマートフォンアプリを通じて病院側の健康データを得られる双方向のしくみも構築していく計画だ。 当面は、同病院の循環器内科と腎臓内分泌代謝内科の患者から同意を取ってスタートし、順次、診療科や対象者を広げていく方針。データは匿名化せず、特定の患者の個人データとして蓄積していく。そのため、クラウドには「最高レベルのセキュリティー」を適用するという。 中部電力本店事業創造本部の野田英智副本部長は「電力会社はもともと個人情報を扱っており、セキュリティーのレベルは高い。データの管理はきちんとやっていく」と強調。定例記者会見で発表した勝野哲社長は「今回は東京電力エリアだが、中電管内でも展開していきたい」と述べた。 (関口威人/nameken)