藤井道人監督、ネット配信のジレンマ明かす「食えるようになるけど映画館から人がいなくなる」
行定勲監督とティーチイン
『新聞記者』『正体』などで人気の藤井道人監督(38)の日台合作映画『青春18×2 君へと続く道』が1日、「くまもと復興映画祭」が開催中の熊本県熊本市の熊本城ホール シビックホールで上映され、藤井監督と熊本県出身の映画祭ディレクター、行定勲監督(56)がティーチインを行った。 【写真】永瀬正敏、浅野忠信、一青窈ら豪華ゲストが集結 イベントでのアザーカット 同映画は18年前の台湾と現在の日本を舞台に、国境と時を超えてつながる初恋の記憶をつづるラブストーリー。紀行エッセーが原作で、台湾の人気俳優シュー・グァンハン、清原果耶がそれぞれ主演。『ブエノスアイレス』などの俳優チャン・チェンがエグゼクティブプロデューサーを務めている。映画祭が熊本を始め、能登、台湾・花蓮での地震からの復興と昨今深まる台湾との友好がテーマになっていることから選ばれた。 行定監督から「今、日本映画を背負っている監督の一人。若いかっこいい俳優たちは藤井君に撮られたいと思っている」と紹介された藤井監督。「祖父が台湾人で、僕はクオーター。20代の時から台湾で映画を撮りたいと思い、営業をかけていました。この企画は10年前から台湾側で動いていて、『新聞記者』を撮り終わった頃にオファーを受け、ロケハンを行った上で、脚本を書き上げました。だから、急に湧いた話ではないです」と明かした。 行定監督は映画について「列車での移動、雪への思いなど台湾映画に対するオマージュ、目配せが入っていて、親しみやすさを感じた。普通なら2本の映画にする話を凝縮して、1本にまとめているが、これは藤井君がちゃんと人に受け入れられる映画をきっちりと作ろうとしているアクションなんです」と称賛した。 劇中には、台湾でも人気の岩井俊二監督の代表作『Love Letter』(行定氏が助監督を務めた)のエピソードも登場する。藤井監督は「『Love Letter』が出てくるのは原作の通りですが、僕的にはめちゃくちゃ葛藤しました。というのも、僕は高校時代、岩井さんと行定監督の作品が大好きで、日大芸術学部に入ったから。その自分の憧れの作品を入れていいのかと思ったから。しかし、『Love Letter』を入れることで、映画の隠れたメッセージを伝えられると思い、先輩の力をお借りすることにしました」と話した。 観客からは映画とネット配信の関係についての質問も。Netflixドラマなどでも活躍する藤井監督は「今は僕から『(公開後は)Netflixでやりたいです』と希望して、それがかなう形になっています。配信によって監督が食えるようになったり、観客側はすぐに見られるという良さもありますが、逆に映画館からお客さんがいなくなってしまうという功罪があると思っています」。 一方の行定監督は「僕は、まずはスクリーンでかけられることが重要。その先の配信まではコントロールしようとは思っていません。というのも、映画はスクリーンサイズで画も音も作っている。その映画を、小さな画面で見るのは、お客さんの側も体力がいるものだと思います。映画館で見てもらって、身を委ねられれば、自分の感情が浮き上がっていくものだと思います」と話した。 最後に、復興映画祭の趣旨について藤井監督は、「僕も台湾の仲間たちが震災にあったり、去年は能登で映画を撮っていましたので、お世話になった方々のところで炊き出しに行ったりしました。映画は人生を豊かにする力があって、僕も映画に人生を変えられた一人です。だから、またお誘いがあれば、駆けつけたい」と約束。さらに、「一昨日から『正体』という映画が公開しているので、映画祭が終わったら見に行ってください」とアピールしていた。
ENCOUNT編集部