「健ちゃんは、すぐに気付かれちゃう」釜山国際映画祭で喝采を浴びた有村架純と坂口健太郎が釜山で感じたこと
ニュージーランドと北海道で行われたロケ
――有村さんはさえ子として、目の前にいる坂口さんの成瀬の中に、死んだ雄介(生田斗真)を感じるという演技をしないといけない。とても難しい気がします。 有村 もちろん成瀬さんと雄介では見た目も声も違うし、性格も違う。それなのに、自分が大切に思っていた人と何かつながっていると感じたら、どうしても追いかけずにいられない。 さえ子が成瀬さんを好きになるとしても、本当は成瀬さん本人を見た方が彼に対しても失礼にならないし、彼自身と対峙する方が良いはずなのに、そこは理屈じゃないんですよね。 やはり、そこに雄介がいるって信じたい気持ち、感じたい気持ちが最初にあったと思うんです。うまく言えないけれど、さえ子もこんがらかっていて、その感覚を出すようにしました。 ――坂口さんは成瀬であるけれど、雄介が乗り移ってるとまでは言わずとも、彼とリンクしてしまうわけですよね。 坂口 成瀬の中に雄介の心臓が入って以降の芝居には、いろんなパターンがあったと思うんです。例えば、ちょっと生田さんが演じてる雄介に寄せてみるのか、それとも全然違う存在としてやるのか。ただ雄介の言葉を僕は口走ったりもする。 当初、黒崎監督からは、雄介の芝居を見て、何か特徴や癖があるんだったら成瀬としてそれを出してもいいという話もあったんです。でも雄介役の生田さんのメインの撮影は最後だったので、ほとんど雄介としての演技を見ることができなかったんです。 有村 さえ子と雄介のシーンの主な撮影はもう最後でした。昨年のニュージーランドロケのあとに、今年の初めに北海道で撮ったんです。 ――物語の冒頭を最後に撮ったということですね。 有村 そうですね。真冬のシーンだったので。 坂口 生前の雄介とさえ子、成瀬とミキ(中村ゆり)が偶然一緒になるところとか、いくつかは先に撮っていたので、生田さんとお会いしてはいたんですが。 ただ成瀬が図書館でさえ子に急に「誕生日おめでとう。今日は特別な日だね」って言う場面は、確実に成瀬の中の雄介が言っている。ここはどういう気持ちで言えばいいのか悩みました。今急に言いたいことを思いついた、と感じているのは成瀬なんですよ。 実際、「ちょっと菅原さん、聞いてください」って最初に言うわけで。だから成瀬としては、「誕生日おめでとう」という言葉が口から出てしまうことに、困惑してた方がいいのか。それともその言葉を言っている瞬間には、雄介のようにちょっと笑みを湛えていた方がいいのか。果たして何が正解なんだろうかと。 最終的には、言い終わった瞬間に成瀬に戻る、というふうに監督がおっしゃって。これはすごく難しいなと思いながらやりましたが、そこに至るまで監督や架純ちゃんとも色々とコミュニケーションを取ったんですね。 他の場面もそうです。悩んだ末に一番最初にやろうとした芝居に戻ったりすることもあったんですが、やってることは同じでも、多分中身はちょっと違う。それを繰り返していく作業でしたね。