手の平に乗るほど小さい「スウェーデントーチ」 なぜ増産が難しい?
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
今回は、「スウェーデントーチ」をご紹介します。 スウェーデントーチとは丸太に切り込みを入れ、なかから燃やすことで1本の丸太がストーブになったり、コンロになったり……いま人気の「焚き火アイテム」として注目されているものです。 このスウェーデントーチを、宮城県蔵王町で製造・販売している方がいます。渡辺悟士さん・44歳。蔵王町の遠刈田温泉で、インターネット関連会社「株式会社ワールドライブ」を営んでいます。 こけしの発祥地として知られる遠刈田温泉で、なぜ渡辺さんはスウェーデントーチをつくり始めたのでしょうか?
千葉県出身の渡辺さんは幼少期を仙台で過ごし、中学生になると、父の転勤により南フランスで暮らしました。フランスで退屈だったのは、日本のゲームが手に入らないことだったそうです。「それなら自分でつくろう」と思ったのが、プログラミングを始めるきっかけでした。 帰国後、大学2年生だった2001年にベンチャー企業を起こします。仕事が忙しくなり、大学を中退。首都圏を拠点にシステムエンジニアとして活動を始めた渡辺さんは、「越境EC」……クロスボーダーとも言いますが、国をまたいで商品を販売するオンラインのネットショップにも進出します。 しかし、これからという時期に東日本大震災が発生。仙台の実家が津波で全壊してしまいます。両親や親戚は無事でしたが、渡辺さんは仕事を中断し、瓦礫の片付けや泥かきなど、実家の復旧作業に追われました。 4年後の2015年、「これからどうしようか」と感じていた渡辺さん。海外生活が長かったので、夫婦で海外移住も考えていましたが、「日本ならどこがいいか」も想定したそうです。 山深く、自然に囲まれ、雪が多そうな場所……そんなイメージだけで、渡辺さんは宮城県蔵王町に移住します。ところが、冬になると想像を絶する寒い冬が待っていました。