原作ゲームは遵守すべき“ルールブック”ではなく“ガイド”

ーーときにはゲーム本編にない要素を入れたり、脚色したりする作業も必要になるかと思います。映像化する上で、譲れないポイントがあれば教えてください。 キジルバッシュ：ゲームIPを映画化・ドラマ化するにあたって、どのゲームであっても、その素材を絶対に守らなければいけないルールブックとしてではなく、ガイドとして使用することが不可欠であると信じています。ゲーム内にあるストーリーやキャラクターをベースに、それをより深めたり、拡張したりするのが、ストーリーテラーとしての私たちの仕事です。私たちが決して軽視してはならないのは、ゲームのトーン、世界観、そして主要なキャラクターです。これらを尊重することで、まるでゲームの中にいるような気分になれる映画やドラマを作ることが可能になります。 ーー映像化の最終的な目標はどこにあるのでしょうか？ キジルバッシュ：私たちは、何よりもまず、制作したドラマや映画が独立したエンターテインメント作品として素晴らしい作品になることを望んでいます。第二に、ゲームのことを知らない視聴者をも魅了し、引き付ける作品を制作したいです。そして最後に、私たちが制作したドラマや映画が、オリジナルのゲームの世界観を正しく表現し、ゲームのファンが誇りに思えるものであることを望んでいます。 ーー映画やドラマへの反響が、今後ゲーム本編に影響を及ぼす可能性も考えられますか？ キジルバッシュ：私たちは、映画／テレビ／ゲームを結びつけるというより高い目的を達成するために、それぞれのクリエイターにいかなる創造的な決定も強制するつもりはありません。ドラマや映画が将来のゲームの方向性に影響を与える可能性のある有機的な方法があるのであれば、それも歓迎しますが、それは私たちにとって必ずしも必要なことではありません。 ーー2023年にリリースされた映像作品のなかでも、『THE LAST OF US』はこれまでに類を見ない功績を残しました。成功の要因をどのように考えていますか？ キジルバッシュ：まず、優れた世界クラスのショーランナーを擁することが重要です。第二に、『THE LAST OF US』のクリエイターたちは単にゲームの内容をなぞるのではなく、ゲームにはなかった新しいストーリー要素を追加したり、プロットポイントを追加したり、キャラクターを深く掘り下げたりして、ゲームの世界を拡張しました。それにより、一つのショーとして非常に完成度の高い作品になったのです。そして何よりも、私たちの成功は、可能な限り最高の品質を実現するために、必要なサポートをしてくれたHBOとソニー・ピクチャーズ テレビジョンのおかげだと思っています。 ーー今後の展望について教えてください。 キジルバッシュ：私たちの取り組みはまだ始まったばかりです。現在、開発段階はさまざまですが、10を超えるプロジェクトがあります。Netflixとは『Horizon』を制作中ですし、Prime Videoでは『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズの配信が予定されていますので、とても楽しみにしています。ご期待ください。