能登半島地震で緊急避難したカマイルカ2頭「帰郷」…飼育員「生き生きとした姿で石川を元気づけて」
福井県坂井市の越前松島水族館は19日、能登半島地震で被災した石川県七尾市ののとじま水族館から緊急避難先として受け入れたカマイルカ2頭を返還した。2頭は健康に問題はないという。(荒田憲助) 【写真】のとじま水族館に戻るため、クレーンでプールから水槽に移されるカマイルカ(19日、福井県坂井市で)
2頭は雄の「ゴウ」と「ニッシー」。地震による断水などでのとじま水族館の水槽の水質が悪化したため、1月6日に越前松島水族館に移送され、2月中旬から来館者に公開されていた。のとじま水族館の飼育施設の復旧工事が完了したため、返還されることになった。
この日朝、越前松島水族館の飼育員が、いずれも体重約100キロの2頭をクレーンでプールから水槽に移し、輸送用のトラックに積み込んだ。飼育員らは手を振って見送り、「寂しい」と涙を拭っていた。トラックはその日のうちにのとじま水族館に到着したという。
越前松島水族館は1997年のロシア船籍タンカー「ナホトカ号」の重油流出事故時、カマイルカ3頭をのとじま水族館に受け入れてもらった縁があった。
当時カマイルカの飼育員だった越前松島水族館の松原亮一館長は「無事に送り出せて、恩返しになった。今後も団結して助け合いたい」と語った。のとじま水族館の高橋勲・企画係長は「何よりも気持ちがありがたかった。10か月以上も大切に世話をしてもらい、感謝でいっぱい」と話していた。
ハンドサインを引き継ぎ飼育
のとじま水族館のカマイルカ2頭の世話をしてきた越前松島水族館飼育員の菊地香織さんは「急に預かることになり、2頭が環境に慣れてくれるか心配だった。無事に帰せてほっとしている」と 安堵していた。
地震直後は、のとじま水族館の固定電話の回線が使えなかったため、両館の飼育員が携帯電話で連絡を取り合い、2頭の餌や訓練に使うハンドサインを引き継いだ。体調管理の方針などについても10か月以上、入念に打ち合わせながら飼育してきた。
「新しい環境でも落ち着いていて、かわいい2頭だった。寂しい気持ちはあるが、元の居場所に戻せる喜びが大きい」と心境を明かし、「生き生きとした姿を見せ、石川県や全国の皆さんを元気づけてほしい。いつか、会いに行けたら」とほほ笑んだ。